青い海に囲まれた島、ライオコット島。
全世界を熱狂させたFFIは終わりを告げたが、それでも各国の選手が滞在しているため未だ人の波が治まることはない。
――そして今日本からの飛行機によって降り立った人物が2人。
「やっとライオコット島に来ることが出来たね」
「あぁ。チケット取るのがあんなに大変だなんて知らなかったなー。ま、こうやって無事来れたんだし」
「そうだね。それじゃあ行こっか」
言葉を交わし、それぞれが荷物を持ちバス停へと向かう。
目的地は、日本エリア。
「そこだー!!豪炎寺ッ、攻めろ!!」
「爆熱!スクリュー!!」
炎を纏ったボールが、ゴールネットを目指し迫る。
しかしそのシュートは深い藍色の少年によって止められてしまった。
「…ふふん。エースストライカーがこんなシュートしか撃てないなんて。ボクの方が強いんじゃない?」
そう挑発的に見やるロココを、豪炎寺は鋭い目で見る。
「ならすぐそのエリアから出てくるといい。だが俺達が、円堂がそう簡単に点を許すとは思えないが」
「そのお誘いはまた今度にしておくよ。今ボクはキーパーとしてキミたちと相対してる。さっ、今度はこっちが攻める番だよ!!!」
現在地・コトアールエリア、イナズマジャパンの面々はリトルギガンドの選手たちと試合をしていた。
大会が終わっても選手たちがこの島に留まる理由、それは各国の選手たちと交流を深めたり試合をするためである。
いくら優れた選手でも彼らはまだ大人というには幼く、そして他国のことをあまり知らない。
だからこそ自身の教養を深め、そして経験を積むために時間の許す限りこの島に滞在しているのだ。
*
「あーあ、引き分けかぁ。今日こそはマモルたちに勝てると思ったんだけど」
「へへっ。お前たちだって前より強くなってるじゃん。こりゃ俺も負けてられないなー!」
ベンチに座り、円堂とロココは笑いあう。
互いが総力をかけた試合は引き分けに終わり、それぞれの選手たちは先ほどまでの激しさはどこにいったのか賑やかに話していた。
「…ボク、今すっごく嬉しいんだ」
スパーツドリンクの容器を握り、ロココは言う。
「キミとこんなに楽しくサッカーが出来たり、話したりできる。…コトアールに帰ったら、そんなこと簡単には出来ないから」
けれどもどこか寂しげなその表情を見て、円堂は手を重ねる。
「確かに俺たちは違う国の人だし、すっごく離れてるのかもしれない。でも俺はそれでもロココや皆と一緒にいれて楽しいし、このまま離れても縁が終わるなんて思わない」
言い聞かせるように、円堂は喋る。
そんな円堂を見て、ロココは微笑んだ。
「そうだね。今一緒にいるのにそんなこと考えちゃダメだよね」
「おうっ。だからさ、また試合しようぜ!あ…試合とかじゃなくてもいいけど」
「うん…じゃあ今度他のエリアへ一緒に出掛けよっか。ボク、コトアールと日本エリアしか行ったことがないんだ」
約束、とロココは右手小指を円堂に向ける。
円堂もそれに応えて小指を絡めた。
彼らはまだ知らない。
「え…っ、円堂くん…!!お母さんが…」
そんな和やかで穏やかな時間は、無惨にも奪い取られてしまうことなど誰にも予想できないのだ。
始まりは、一本の電話。
彼を闇へと引きずり込む、正に招き手であった。