L or D
もしも円堂が伝承の鍵を付けてしまったら・3





「ここに我らの花嫁が居ると聞いてここに来ただけだが」
「隠しても無駄だぜェ。生贄の魂はここにあるんだからな!」




鍵が掛かっていた玄関の扉を開けた一同の目に映ったのは、今までに見たことのないユニフォームを着た2人の人物。
それぞれに悪魔と天使の羽が付いているそれは、物語の中の存在のようだった。
「おいフィディオ、こいつらはなんなんだ」
「っ、なんで出てきた!?」
「なんでって…、いきなり雷落ちるしお前が叫びだすし…て、」
どうなっているんだ、とテレスは呟く。
先程、本当にさっきまで窓から見えていた曇天は、外へ行けば晴天のままで。
驚く様を見て、悪魔の羽の人物は哂う。
「ハハッ、出てきやがったな!全く、ニンゲンてのは考えなしだから困るぜェ」
「ふん…。だからこそ我らの目的も簡単に成し遂げられるというものだ。お前たちはこの島で動きすぎた。だからこそ我らも動かざるをえなくなってしまった」
相対して天使の羽の人物は苛立ち混じりにそう言う。


「…お前達、FFIに参加しているチームじゃないな。ここに何の用だ」
「しかもチャイムも鳴らさずに呼び出すとは。…少々、礼儀がなっていないようだな」
「とりあえず、一度帰ることをオススメするよ!ミー達は今ジャパンと話してたんだからさ!!」
海外組がそう圧力をかけるものの、物ともせずに2人は続ける。


「お前たちがギャンギャン騒ぐのはどうだっていい。早く生贄を出しな?そうすりゃ帰ってやるからよォ」
「私だってこんな汚れた地に長くはいたくない。花嫁を差し出せ」


「「鍵に選ばれた、人間を」」




鍵、という言葉にジャパンメンバーが表情を硬くする。
しかし今までの発言で目的が鍵を持つ人間=円堂であることを知ったことで、あの異様なブレスレットの犯人が明らかになる。

「―――ふん、どうやらそこにいるみたいだなぁ!」
いつの間にか手に収まっていたボールを地面に落とし、自身もそれを追いかけて悪魔の人物はそれを蹴る。
「な…なんだあれ…!!」
ボールの白と黒が反転し、何かを介して波動砲のような威力のまま迫る。
「立向居!!」
「円堂さん!!」

その様を見て、円堂と立向居は顔を見合わせて互いにそれぞれのキーパー技を発動させる。

「怒りの鉄槌…!」
威力は削がれたものの、勢いを完全に殺し切れずに円堂と共にボールは向かう。
「ムゲン・ザ・ハンドッ!!」
しかし立向居が無数の腕を使い円堂ごとそれを受け止める。
その様子を見て全員は溜息を吐いた。



「…ニンゲン如きに止められるとはな。貴様も大したことないようだな―――デスタ」
「はっ…!2人がかりで止めてなんになるってんだ?テメェもちったあ協力しろよ、セイン」
「馬鹿が。お前は魔王が復活をするために生贄を求め、私は魔王を封じるために花嫁を探す。協力などできるはずがなかろう」
いきなり口喧嘩をしだした2人を見て一同はなんとか円堂をこの場から離そうとする。
情報が少ない現状でも円堂が危機に陥っていることは明らかであり、そしてそれを黙って見過ごす訳にはいかない。



しかし、デスタが指をパチン、と鳴らした瞬間。

黒い雷が、玄関近くに落ちた。




「お前か、魔王の花嫁になる者は」
「テメェが生贄だな?」


雷が落ちたことで発生した光と土煙でその場は何も見えなくなる。
そしてそれらが晴れた場には、右手をセインに、左手をデスタに捕まれている円堂の姿があった。





「…おい、どうしてこの伝承の鍵を2つも持っているのだ」
「なんか双子のおじいさん?に貰ったんだよ…」
「そのじいさんってのは、あのマント着けてる奴みたいな眼鏡のかァ?」
「ああ、怪しかったけど…」
「「………」」


そのまま円堂の腕を掴み2人は固まる。
ジッと嵌められた腕輪を見、そして――――




「あっっのクソジジイどもがァアアアアアァア!!」
「なにを考えているんだ…!!?鍵を同一人物に渡すなんて…!!」
絶叫するデスタと驚愕するセイン、そんな光景に全員が瞠目した。


「…どうやらアイツ等は、鍵をそれぞれ1人に渡していると思ったんだな。だから円堂がそれを2つとも持っていることに驚いてるんだろう」
「ていうかどうして把握してなかったんだろうね。あの発言的に仲間っぽいじゃないか、そのお爺さんと彼ら」
「そんなことより早くキャプテン助けようよ。今なら難無く助けれそうじゃない」
「よし、じゃあ君たちが囮になってる間にオレがマモルを助け出すよ!」
「「「黙れおでんソード」」」
「ひとりワンツーでもやってなよ!」


十分に助けることができるはずなのにギャーギャーと騒ぐジャパン+α。
そんな彼らを置き去りにして、どんどんと事態は進んでいく。



「まあ良い。花嫁はヘブンズゲートに連れて行く!来たるべき千年祭の為に!!」
「ククッ…そうはさせるかよォ!生贄はデモンズゲートへ行くんだ!魔王様の復活のためにィ!!」



「「儀式の地、マグニートへ!!」」





言葉とともに、白と黒の雷が落ちて再び一同の目を眩ます。

そしてその場にデスタとセイン、円堂の姿は無かった。






「円堂!!」
「まさか、本当に連れて行かれたのか!!?」
「くっそ…っ」
焦る周囲に反して鬼道はあくまでも冷静であろうとする。
(奴らは言っていた。千年祭、と。生贄、花嫁、儀式、マグニート…魔王)
ピースの欠片を組み合わせ、そして彼らの言動を枠に嵌める。

おぼろげに見えてきた物は……仮説。



「…鬼道、なにか分かったのか?」
佐久間の言葉で、鬼道はこの滅茶苦茶な考えを皆に発言することを決意する。
なにか行動をしなければ、円堂がどうなってしまうか分からないのだから。


「俺は、奴らはどちらにせよ円堂を【魔王】に捧げようとしていると思っている。デスタの言い分はそのままだが、セインの言葉からも生贄にしようという思惑が感じられた」
「ならどうするんだ!本当に円堂が…」



「だから、助けに行くんだ。恐らくあいつ等は自分たちのエリアに戻っているだろう。さきほど言っていたヘブンズゲート、デモンズゲートに」
「Stop!だけどミーたちはそんなエリア聞いたことがないよ!」
「俺も聞いたことがないな。テレス、お前はどうだ」
「知らないな。大体、この島に参加国以外の専用エリアなんてない筈だが」



「…マグニート、というところじゃないのか?」
「豪炎寺?」
ポツリ、豪炎寺は呟く。
視線を地面に向けたまま、それでも確かに。
「奴らは互いを知っていた。ならそれぞれのエリアは近い筈」
「そういえばアイツら両方ともマグニートって言ってたな」
急いで春奈がパソコンを開き、ライオコット島の地図を見る。


そこには、マグニート山と記されていた。



「決まりだな。マグニート山に行けば円堂を助けることができるはずだ」
「でもきっとエリアは別々だね。…どうする、2チームに分かれて行くかい?」
吹雪の提案に場の殆どが首を縦に振るが、それを不動が鼻で笑う。

「大体、円堂ちゃんがドッチの方に行くのか決まってないのにおめおめと帰れると思うか?俺としてはまず相手と決着を付けるだろうな」
「…それも一理あるな。どっちみち円堂を守るなら両方と戦う必要があるだろう」
鬼道もそれに賛成し、チームを分けることなく全員で行動することにする。
そんな様子を見て海外勢も笑う。

「俺達も協力しよう」
「エンドーを助けるんだからね!ギンギンに行こうじゃないか!」
「まあ…乗りかかった船だからな」
「ふ…、まったく素直じゃないのも困り者だな」
「あの時の恩を返すために、マモルを助けるために頑張るよ!」



元は敵チームだった彼らの助力を得て、ジャパンメンバーは円堂を想う。
こうして彼は輪を広げていく、敵味方も越えて輪を大きく大きく。





「よし、それじゃあ行こう」





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(その繋がりは、線を越える)









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