刹那のぬくもり


「…眠い」


嗚呼、また彼女は眠りに就こうとする。


もう、10時間以上寝てるはずなのに。


「さぁちゃん、外行こうよ!」

ダメ元で言ってみるものの、

「イ・ヤ」

と、予想通りの返答。

(分かってたけどね…)



もそもそ…


「何してんの?!あっち行ってよ!」

彼女が慌てたように、怒声をあげた。

「俺のベッドだもん。良いでしょ!…嫌ならさぁちゃんが出なよ」

さぁちゃんが潜り込んでいる布団の中に、入って冷たく言ってみる俺。

…でも、端(ハナ)から、簡単に彼女を追い出すつもりなんかなくて。

外に無理矢理連れて行くより、彼女の反応が面白いから、“仕返し”とばかりに、からかってみることに。


まずは、俺に背を向けた彼女を転がして、仰向けにしてみる。

で、見つめてみた。

案の定、フイッ、と目を逸らす彼女に言ってみた。

「目、逸らさないでよ」

俺が言うと、

「やだよ。恥ずかしい」

彼女は、恥ずかしがり屋さんだから。

もう、顔が真っ赤。

でも、そのまま彼女の手を頭の上の方に持ってきて、指を絡め合う。

「やだよぅ」

随分と気弱な声になって、語尾も消えかかるほど。

「何が?」

あくまでも、冷たく、冷静に言い放つと、泣きそうになるから。

「ごめんね、さぁちゃん!」

笑って言えば、彼女が溜めた涙がキラキラして、綺麗で。

「たーちゃんは、無理にはしないよね?」

苦笑いしながら言う彼女。

(…やり過ぎたな、これは)

「ごめん」

うなだれる俺の頭を、彼女は、

「いいよ。大丈夫だから。…よしよーし」

なんて、言いながら撫でてくれる。

仰向けに寝転ぶ彼女に、覆い被さる形で、抱き締めてみた。

温かくて、幸せになる。





(bkm/comment)

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -