それは、曖昧で。
突然、僕の家にやって来た彼女。
「やっぱり、恋人じゃないと思うの」
いきなり、こんな事を言い出してきたのだ。
一体どうしたというのだろう。
そう言えば、
「私、恋人らしいこと何も出来ないもん」
なんて、言うの。
「そうやって、今までやって来たのに。今さら言うの?」
彼女がそんな事を言い出した事に、少し驚きもあるし、本当に今さらだと思う。
一体何年恋人らしいところの抜けた、カップルやってると思っているのか…。
街は、クリスマスも、バレンタインも、時の彼方へ消し去った。
時はもうすぐ、ホワイトデー。
バレンタインに貰ったチョコのお返しなら、もう考えてあるけれど。
彼女から貰った覚えは全くない。
「だって、記念日は必要ないし、バレンタインは…」
「忘れてたの?」
記念日の必要性については、また今度にしておこう。
僕に言われて、困った顔する彼女。
「忘れてたんじゃないよ。ただ、何かする気が起きなかったの」
シュンとする彼女。
今日はやけに、潮らしい。
「…なにかあったの?」
少し彼女が心配になってしまう。
「拓乃は、バレンタインチョコはいっぱい貰うし、素直な子が好きだって言うしさ。じゃあ、何で私に好きだって言うのかなって思ったりね…何か不安になったのっ!」
その声音は、早口にまくし立てるようで、語尾には強い色が見えた。
そして彼女は、突然泣き出してしまって。
よしよしって、頭撫でて、抱き締めてみる。
ギュって、服を握った手はなかなか離してくれそうもない。
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(bkm/comment)▽