黄金体験(2/2)

恐怖はまさしく過去からやってくる…。
「これは『試練』だ。過去に打ち勝てという『試練』と俺は受け取った……」
そう、我…いや俺が屈してはならない試練。
コロネのように巻いた金髪を頭に三つ乗せた少年が覚悟を決めた目で俺を睨む。
こうして改めてその髪型を解説してみると笑いが起きそうになるがさすがにそれは抑えた。いや、しかし…コロネヘアとかマヂないワ(笑)
「お義父さん!娘さんをワシにくださいッ!!」
「ええいッ!貴様にお義父さんと呼ばれる筋合いなどないッ」
『過去』からやって来た不幸の種、忌々しくも俺と同じ存在。
何故お前まで『ここ』に来る。その執念たるや一種異様な尊敬すら俺は抱くぞッ。
「そんなこと言わずにお義「キング・クリムゾン!」
それはソレとして彼奴に『おとうさん』と呼ばれるなんて反吐が出るね。
聞きたくない言葉を時間と共に吹っ飛ばした。
俺のスタンド『キング・クリムゾン』の能力ではこの世の時間は消し飛び……そして俺以外の全ての人間はこの時間の中で動いた足音を覚えていない。空の雲は千切れ飛んだ事に気付かず……消えた炎は消えた瞬間を炎自身さえも認識しない!
『結果』だけだ!この世には『結果』だけ残る!!
「何度言われようと俺の気持ちは変わらん。娘は貴様にはやらんぞォッ」
「何を言っても無駄のようだな」
「ふん!」
「それなら…」
貴様の次の行動など俺には『分かっている』。
キング・クリムゾン第二の能力エピタフによってな。
「力尽くだっ!ゴールド・エクスペリエンス!!はあああ…無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!WRYYYYYYYY!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァ!」
ふん…そうくるか。だが、
「キング・クリムゾン!…俺の前ではそのラッシュこそが『無駄無駄ァ』だ」
消し飛ばされる時の中で言ってはみたが彼奴はそれを認識する事は出来ない。
彼奴とそのスタンドは動きの鈍い突きを放っているところだ。
そして、時は動き出す!…別の奴の台詞を言っちまったみたいだな。
「あっ…また時間を消し飛ばしたな!」
元通りに戻った時間の流れで彼奴は目敏く壁掛け時計の秒針を確認して、飛んだ時間を認識した。
小賢しい小僧だ。
「さあ!何度でも攻撃してくるがいい!何度でも時を飛ばしてやるッ!」
「っく、くそ…!」
この調子では俺には勝てんぞ!
と、言うかお養父さんとか言いながら攻撃してくるってどういう神経してんだ。
いい加減この小僧を再起不能にしてやろうかと考えていたら、
「ディアボロ!貴様何をしているッ」
「トリ…ッシュ…」
キッチンにつながる扉のところに我が娘が仁王立ちしていた。
顔には怒りが貼り付けられて、その表情のまま俺へと彼女は詰め寄る。
ドナテラの気の強いところばっかり似た気がするな。
いや…もともとか。
なんせ中身はかの凶王だ、例え記憶が『無くても』変わらない。
「キンクリ使うなとあれほど言っただろう。お陰でパスタが茹で過ぎだッ」
「あー…すまない、駄目にしたのは父さんが全部食べるからよけておけ」
「元よりそうするつもりだ」
「…」
『刑部』の事を伝えた事は無い、それはきっとこれからも。
覚えていない彼女にとってその情報は邪魔にしかならない。
ドナテラには悪いが……『我』を彼女に見せる訳には行かぬ。
俺はこの娘の父親として生きて、死ぬ。刑部の顔は要らないんだ。
「…?ディアボロ…?」
「…それはそれで寂しいが」
俺は見上げてくる(と言うか睨んでくる)娘の頭を撫でた。俺のと同じ唐紅の髪は俺のものよりずっと柔らかくて母親に似ている。
それにしても姉妹で親友で父子、か。…ひひ、奇妙な関係に拍車が掛かってしまったなぁ。
「ディア、」
「三な……トリッシュ!今日も可愛いな!」
「……、…はぁ…貴様は相変わらず騒がしいな、ジョルノ」
これをお前に、なんてコロネがスタンドの力で作り出した薔薇をトリッシュに手渡している。そんな気障な真似、貴様には似合わんぞ狸野郎。
「トリッシュ!ワシとけっ「キング・クリムゾンッッ!」
とにかく!我が娘トリッシュは貴様のような男には嫁がせん、絶対になッ!

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