オレの家族を紹介します。

抜き足、差し足、忍び足。
「ただいまー…」
そろりそろりと玄関をくぐると、
「遅かったな」
母さんの声が降って来た。
ぎくりと強ばる体、おそるおそる自分の足元に向けていた視線を上に向けていくと…
「こんな夜遅くまでどこをほっつき歩いていた」
「あ、あの…友達と遊びに行ってて…でもまだ七時だし、」
「口答えするなッ」
仁王立ちしてオレを見下ろす姿。
めちゃくちゃ怒ってるー!もともとつり上がった目だけど、今は余計に鋭くなっている。
「綱吉」
「はいぃっ!」
思わず背筋が伸びた。母さんの声にはそんな作用がある。
「遅くなる時は連絡をしろと伝えてあるはずだ」
「ごめんなさいっ忘れてましたっ!」
「…、次からは気をつけろ」
「はいっ」
最敬礼で謝れば溜め息をつく母さん。許してくれ……た?
母さんは口調はキツイし言葉もキツイ。
だけど間違ったことは言わないし、それにオレのことを思って叱ってくれてるんだと思う。
だからオレは母さんが好きだ、
「みつ、過保護も程々にな」
間違いなくこの人以上に。てか確実に。
寝起きなのかのそのそとした動きで姿を現したのは……オレの父さん。
くわあっ、とアクビをしながらガリガリ頭を掻いてる。なんかもう…ダメオヤジって感じだ。
「フン、これくらいが普通だ」
幻滅したっていいはずの姿だけど母さんは気にしたふうもなく父さんの言葉に返す。
いやまぁ…愛想つかされて離婚ってなるよりはいいんだけどね…はぁ……。
…父さんは得体がしれない。
平日の昼間っから(もう夜だけど)家でごろごろしてるこの人がいったい何の仕事をしてるのかも知らない。ってか分からない。
一度…オレがまだランドセル背負ってたころに聞いたことがあるけど「その内教えてやる」とはぐらかされた。怪しすぎる。
だからなんとしてもつきとめてやろうと父さんの書斎をあさったことがあるけれど、刀と槍がなぜか出てきた時点でオレは家探しをやめた。見なかったことにした。
だって怖すぎたから。
「綱吉」
「…なに」
父さんはオレの頭を押さえつけるように乱暴になでてくる。
本当に容赦なく。
「っわ、ちょっ、なにすんだっ…やめろよ!やめろってばっ!」
「父親に向かってその口の利き方はなんだッ」
「みつ、そう怒るな。……綱吉、」
怒る母さんをなだめて、少し顔を引き締めて真剣な目の父さん。
「みつに心配掛けるなよ」
この…たまに見せるこっちを全部見透かすような目が苦手だ。
この目の前じゃオレがとんでもなく子どもで、どうやったって敵わない気がする。
「…うん」
「いい子だ…………さって……それじゃあ飯だ飯!」
うって変わってにこにこと(にやにや、かもしれない)言う父さん。でもオレは怒られるのを覚悟で言わなくちゃいけないことが一つあるんだ。
「……あ、オレ…友達と食べてきたから…いらな…い…」
「ンだとお!?みつの飯が食えねェとはいい度胸じゃねえかァッ!」
「いひゃい、いひゃい、とーひゃんひゃめてよー」
オレのほっぺたをぐにっと引っぱる怒り顔の父さんに母さんが呆れのため息をつく。
…さっき感じたことはやっぱり気のせいかな。

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