待ち合わせは偶然に

思い立ったが吉日、
「シャル、旅団メンバーに連絡を取れ。ヨークシンに行く」
あとはぜーんぶ凶だッ!
「…え?クロロいきなりどうしたの?」
だらだらとパソコンを弄くっていたシャルが怪訝な顔で俺に振り返った。
スピーカーからはゲーム音楽が垂れ流されている。…ソレ、もしかして昨日の夜からずっとしてたのか?
「俺は今団長モードだ、団長と呼べ」
「はいはい…で、ヨークシンってことは…何?オークションに参加したいの?」
シャルは椅子をわざわざ反対に座り直して背もたれに腕を乗せる。
ぐぐ、と体重を掛けられた背もたれがギィィと鳴った。今壊れたら絶対面白いのに…そう思ったが残念ながら人生とはそう上手くいくものではないらしい。
…今は人生論を考えている場合ではなかったか。
「いや、オークションを潰す」
「ああ、潰すんだ……って、えぇっ!?クロロそれ本気かよ!」
ノリツッコミとは成長したな。ただ…もう少しツッコミの言葉を捻っていたら満点だったのだが。
「言っておくが俺が潰したいのは表には出ないマフィア共が主催する闇オークション…人身・人体売買だ。あと団長と呼べ」
「あー、それなら納得。クロロってマフィア嫌いだよねー」
「だから団長と呼べと…まあいい、暇なやつだけでいい。八月三十一日ヨークシン集合だ」
せっかくカッコよくキメたってのに、バックに流れるやけに明るい電子音のせいで台無しじゃないか。


と、ゆーワケで俺inヨークシン!
さっそく有言実行、旅団の活動中なのだが…
「や、久しぶり」
わあこんな所で会うだなんて奇遇だな。それとも俺が忘れてるだけでここで待ち合わせでもしてたっけ?…こんな肉塊転がる血の海で?
団員たちの警戒の目も何のその、イルミはひらひらと手を振ってきた。ので俺も振り返しておいた。
何やってんだと言わんばかりの冷たい視線をパクから感じるのは気のせいだ。
「何故お前が居るんだイルミ=ゾルディック」
「んー…一応仕事だったんだけど」
「…まさか俺たちがターゲットじゃないだろうな」
もしそうだってんなら俺は旅団の団長としてお前を殺さなくちゃならない。…いやまてよ、依頼主を聞き出してそっちを殺すって手があったか。
「あははは、幻影旅団の暗殺なんて割に合わない仕事受けないよ。俺のターゲットはこっち、その中のどれか」
そんな俺の杞憂もなんのその、イルミはカラカラと笑い(ただし無表情)生物だったものの山を指さした。
あーよかったよかった殺し合わなくて済んだ、と胸を撫で下ろす俺とは違い、
「そいつ何ね。殺すか?」
ピリピリと殺気の篭る目をイルミへ向ける団員たち。
あ…まだ、なんら解決してなかった。イルミは未だアウェーのままだ。(本人がそう感じているかどうかは別だが)
どうにかしないとな、
「止せフェイタン、俺の…………友人だ。手を出すなよ」
と制止の言葉を出した。
ま、戦い挑んだところでどうせ勝てないんだろうけど。ちなみにフェイタンを侮っているワケではない、アイツの戦いの経験値が高すぎるだけだ。
あと攻め方の意地が悪い、えげつない、鬼畜…やべ睨まれた。
「えっ団長友達いたの!?」
「意外…」
「単なる知り合いじゃねーのかぁ?」
「お前らっ失礼すぎるぞ!」
大袈裟に驚くシャルがムカつくのはもちろんで、ほんっとおに意外そうにぽつりと呟くシズクには涙が出そうになる。…クロロ泣かない、だって男の子だもん!自分でやっておいてあれだが気持ち悪いな。
とりあえず一番失礼なノブナガはあとでぶん殴っておこう、そうしよう。
「団長の友人ならオマエ強えだろ?オレと戦おうぜ」
「嫌、面倒」
絡むなウヴォー。そいつは策を弄するタイプだ、一番お前とは相性が悪い。
友人発言が悪かったのか?
いきなりヤツらは興味津々、好奇心旺盛な顔でイルミの様子を窺っている。
種類は変われど向けられる視線。
それを気にした素振りを見せずに、
「そうだ、クロロこのあと暇?ご飯食べ行こうよ」
イルミは言った。
凄惨な殺人現場には似つかわしくないノンキな声だった。

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