黄金体験(1/2)

マ、ちと我の与太話を聞け。
我は大谷吉継として死んだ後、またもや記憶を保ったままに新しき体を得た。

あ、ありのまま起こった事を話すぜ…!
『我はイタリアの女子刑務所に服役中の『二年以上男との接触がなかった』はずの女から産み落とされた』
ちょっとナニを言っておるか分からぬと思うが、我も何をされたか分からぬ。
頭がどうにかなりそうよ、異常出生だとか処女懐胎だとかそんなチャチなものでは断じてない……もっと恐ろしいものの片鱗を味わったワ!…と冗談事はここまでにしておいて。

刑務所で子育ては出来ぬ、我はサルディーニャの神父の養子となった。それ以降ハハオヤと連絡を取った事は無い。向こうもきっと欲しくないだろう。
そして、なんやかんやでサルディーニャに観光に来ていたドナテラ・ウナと結ばれてしもうた。我から言える事は一つ、イタリア女は怖い。
それでどうなったかと言うと積極的イタリア女性代表のドナテラに子が出来た。それを捨て置くのは甲斐性の無い男のする事よ、我は責任持って彼女と籍を入れた。
それが十五年前、我が十八での事よ。ヤレ、出来婚とは我も青いナァ。
ところで、唐突に、藪から棒に、であるが…こんな標語を知っておるか?
『麻薬やめますか?人間やめますか?』
イタリアに麻薬を蔓延させていたギャングをぶっ倒していたらナニユエか我はギャングのボスになっていた。意味がとことん分からぬ。
マ、人を動かすのは慣れておったからの、我はボス業をそつなくこなしておったのだが…去年の事よ。ドナテラが病で呆気無く逝ってしもうた。
「ドナッ!ドナテラッ…!」
「…あなた」
「お前は、俺を…俺達を置いていく気か…?」
「ねえ、私あなたを恨んでるの」
「…なに、を」
「あなたはいつも隠しごとばかり…」
「………そんな事っ」
「でもいいわ、許してあげる。…だから、」
「ドナ」
「あの子には本当の『あなた』を見せてあげてね」

父と子…娘…のたった二人きりの家族になってしもうたのだ。

こんな我を最大の危機が襲う。


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