キマイラ

「ハーマイオニー!いい加減あんなヤツと話すのやめろよ!」
そんな言葉が行く先で聞こえてきた。
やれやれ朝から元気な事だ、大広間中に響いているじゃないか。恥ずかしくないのかね。
ふわふわ栗毛が揺れて、
「あら、あんなヤツって誰の事?」
澄ました声でそう言っている。
それに答えて赤毛。
「決まってるだろ。マルフォイだよ!!」
そりゃどーも。
呼び捨てられた名前にムッとする。丁寧にミスターマルフォイって呼べよ。
赤毛がイライラと声を上げているが何故僕が貴様にそこまで言われなきゃならないのだ。
「何故?」
「スリザリンだからに決まってるじゃないかっ、君は勉強出来るけどそこまで言わなきゃ分からないんだねぇ!!」
「私の成績があなたより遥かに良いのは事実だけれどそれは関係ないでしょ。それに寮も関係ないわ」
まったくだ、もっと言ってやってくれ。
別に僕は寮関係なくグリフィンドールのヤツとも仲良くしてやったっていいんだぜ?
それをグリフィンのヤツらはぐちぐちと…!
「よう、ハーマイオニー」
「おはようドラコ……よう、じゃなくてちゃんと挨拶しなさい」
貴様は私のかーちゃんか……おはようハーマイオニー!これでいいだろッ!」
「はい、よく出来ました」
「…………フン」
今も昔も口うるさいったらありゃしない。
ハーミーに改めて挨拶をすれば、彼女は満足そうに笑って僕の頭を撫でる。子供扱いはやめろよな。
「それでマルフォイ何の用だよ」
「は?ウィーズリーお前には用なんかない。ハーマイオニー、うちのダメ親父が本を送ってきたのだが確かこれ前に読みたがってたやつだろ?貸してやるよ」
「いいの?」
「ああ。僕には難しすぎるし…君がそれを読んで、僕に分かりやすく説明してくれればいい」
「またあなたは楽をしようと…まあいいわ、本のお礼にみっっっしり個人授業をしてあげる」
「げえっヤブヘビだった」
突っ掛ってくる赤毛は大人な対応でスルーしておいた。相手にするのが面倒だからな。
なのに、
「ハーマイオニー!マルフォイなんかと話すのはよせって言ってるだろぉ!?」
僕とハーミーの楽しい(?)会話に割り込むなんて、ね。
貴様は命知らずだな。
辞書より分厚い本で鍛えられた彼女の鉄拳が飛んだ。えーとあれだ、ご愁傷様。
「そんな事言うとぶつわよ」
「もうぶたれてる!!」
「ハッ!男の嫉妬は見苦しいぞウィーズリー」
「なんだと!」
ついつい本音を漏らせば胸倉を掴んでくる赤毛君。学習しないヤツだな、
「ロン…もう一度殴られたい?」
「殴ってから言わないで欲しいねっ!」
ほらまた殴られた。
「ふはははは、ぶぁーかッ」
「ドラコ、あなたも挑発するのはやめなさい」
分かりましただからその振り上げた拳は納めてください。
ハーミーと一進一退の攻防を繰り広げていると、
「ところでさ…」
何だい眼鏡君、喚く赤毛を無視してさっきからもそもそトースト齧ってたくせに突然どうした。
「…そのー…二人は付き合ってるの…?」
我らが英雄(笑)ハリー・ポッターは跳ねた髪の毛を気にしながら言った。
本当に突然で何の脈絡もないな。
赤毛は何故かそわそわと落ち着きがない。…?ホントに何で?
「っぶ、はははは!ポッターお前笑いのセンス最高だな!あはははははは、ひーお腹痛い」
周りが引いた目を向けてきている気がするが笑いは止まりそうにない。
こんなの僕のキャラじゃないなんて言わないで。ポッターが変な事言うのが悪い。
「ハリー、すぐに恋愛に結びつけるのはよくないわ。…あなたくらいの年だったら仕方ないかもしれないけど」
「君も同じ年だよ」
ポッターの憮然とした顔が余計に可笑しくてしばらく笑いは止まりそうなかった。

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