空飛ぶ船は離陸しない

いきなり見知らぬ場所にテレポーテーション…ってンなアホなッ!
でも残念ながら起こってしまった事実らしい、さっきまで戦場にいたのに。
何だここは…うん…?周りの構造的に船、なのか…?なら今いるのは甲板か。
「うーん…ここはどこだ…?三成知ってるか?」
「私が知るワケないだろう。……あ…声がする。人がいるようだぞ」
何を言っているのかまでは聞き取れないが、それでも確かに聞こえる話し声。
顔色を少し安堵に染めて、
「それはいい。ここがどこか聞けそうだな」
警戒心ゼロでさくさく歩みを進める家康。もう少し慎重に行動しろ…とか言わない。
べ、別に何か起きた時の生贄にしてやろうとか思ってるんじゃないんだからね!
家康なら何か起こってもどうにかするだろーしと思ってるだけなんだからっ!
つーワケでヤツの後ろに黙ってついて行く。
お、誰か居…
「口を謹めよ…私は神だ!!」
「お前のどこが」「それならワシだって神だっ」
おいコラ、誰かの台詞を遮ってるぞ。
ほうら注目浴びちゃったじゃないかどうしてくれるんだ。
はしたない格好をした女とエキゾチックな格好をした半裸の男がこちらへ振り返る。どうもひどく驚いているみたいだ。
「はぁっ……初っ端から何を口走っているんだ貴様は」
「いやあ、あははは…つい!」
ついって何だよ、ついって。
そりゃあ確かに神君家康とか言うけどさあそれは死んだ後に祀り上げられたからであって貴様はまだ生きてるから唯の人だ、よってその発言は痛い子ちゃんだからやめなさい。
うーん、それにしてもあの半裸……太鼓が背中にくっついてるって随分独創的なお洒落ですね。これで頭がアフロだったら完璧に雷様だよなあ。
しかも今登ってきた麦藁帽子の男は、某海賊漫画の主人公にそっくり……まさか本人か!?
「なあナミ、あいつらだれだ?」
「あたしが知るわけないでしょっ!」
あー…もしかしてシリアスな場面ぶち壊しちゃった…?
そんな事お構いなしに家康は空気読まず、
「なあ!少し聞きたいんだがここはど、」
「100万V放電(ヴァーリー)
敵意ゼロのにこやか笑顔で話しかけた。ら、何が気に障ったのか(真面目なシーンで割って入ったせいか)半裸男が技名を叫びながら雷を飛ばしてきた。コイツ婆裟羅者だったのか。
正面からまともに雷撃を喰らった家康が吹っ飛ぶ。
「い、家康ゥゥウッ!?」
思わず彼奴の名を呼ぶ声が裏返った。や、だって今のはさすがにヤバイんじゃないの?
まさか徳川家康討ち死に!?
こんな見知らぬ土地で私を置いて逝くなんて認可しないぞ家康ゥゥッ!
「ったぁ〜。……独眼竜の電撃より強いかもしれないなあ」
「そう言いながら何故貴様は平気そうな顔をしている。そしてどくがんりゅーとは誰だ」
…あ、心配するだけ損だった。ヤツは「ほっ」と軽い動作で起き上がりへらへらと笑う。
「奥州の伊達政宗公だが…それをお前に覚えてもらうのは諦めたよ。さて…………ひどいじゃないか、いきなり攻撃してくるなんて」
顔だけは笑っている。
「東照権現徳川家康、武器を捨ててお前に挑もう」
「ヤハハハハ!今の攻撃を受けていながらその威勢とは中々見どころがあるじゃないか!いいだろう、余興だ…一度だけ避けも受け止めもしない。攻撃してくるといい」
「そうか?それじゃあお言葉に甘えて…………っふ!」
踏み込みで迫る家康を宣言通りに回避するでもなく余裕そうな顔で見る半裸。
まさか何か策を仕込んで…!?不味いぞ家康無闇に突っ込むな!
「ぅ、グッ!?バカな…!?」
と思ったらモロ普通に攻撃食らってるー!
家康の光り輝くボディーブローがみしりと嫌な音を立てて半裸の鳩尾に決まった。
なんださっきのは思わせぶりかよ。
ワケが分からないとでも言いそうな顔でよろめく半裸、だが家康は容赦なく、
「フン!」
耐心磐石タメあり。
うわ…ごっ、て鳴った。頭蓋骨でも割れてそうな音に鳥肌が立つ。
「怒ったりしないでくれよ?…先に手を出したのはお前だからな、これは正当防衛だ」
いや、過剰防衛だろ。この感想は心の内に留めておこう。
権現モードの時は放っておくに限るな、
「女…いくつか聞きたい事がある、答えろ拒否は認めない」
青褪めた顔で半裸と家康の戦いもとい家康無双を見ている女に声を掛ける。
違うから、これ現実逃避とかじゃなくって現状把握に勤しんでいるだけだから。
ついでに麦藁の方に声を掛けないのは、
「はー…あいつつえーなぁ…」
まともな答えが返ってくると思えないのが理由だ。戦いの方に釘付けだし。
「あ……あんたたち一体何なの!?」
質問に質問で返すなと教わらなかったのか?
フ…まあいい、答えてやろう。
「ただの通りすがりだ」
「ウソつけーー!!」
嘘だなんて心外だ。私は嘘は吐かない。

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