○○ゲットだぜ!

十代もまだ中盤だというのに人生に疲れた私。だってイロイロあったんだもん。
まずアレだ、十才で生まれ故郷マサラタウンにさよならバイバイ。ジジ…オーキド博士にポケモンもらって旅立ったっけなあ…。
それからはもう『可愛い子には旅をさせよ』ってことわざの範疇を超えた冒険の数々。
ジムリーダーに挑戦したり、騒動に巻き込まれたり、某R団壊滅させたり、四天王に挑んだり…イロイロあったな。
そんなこんなでポケモンリーグを制覇しチャンピオンになった私だが、チャンピオンって実は多忙なんだぜ?四天王を勝ち抜いたトレーナーと戦うだけの簡単なお仕事かと思ったら意外とテレビ露出が激しくて、そこらのアイドルよりよっぽど忙しい。レギュラー番組週八本とか殺す気だろ。
つーワケで私はチャンピオンをワタルに押し付…任せて隠居する事にした。そうは言っても人の目があるところではダメだ、どこか静かに過ごせる場所はないものか…そして思いつく。
生半可な実力者では立ち入る事すら許されない、その山の名はシロガネ山。この地でレッツ世捨て人だ、ちょっと早いセカンドライフの始まりだぜー。
そう思っていた時期が私にもありました。


深々と降り積もる白。
人が滅多に来ないここは喧騒とは隔絶されていて過ごしやすい。
「…だったはずなのだが」
うわっ寒っ…え!?雪??、この生き物は猫でござろうか…ぬああっ引っかかれた!、コレってアレだよな、これはあれよナ、
なーんか妙に騒がしいアンド聞き覚えのあるよーな声が聞こえてくる。
「まさかの予感…幻聴、じゃないよなあ?」
「グルルル…」
んな事知るかっ、とそっぽ向かれた。
今日のトレーニングはここまでにして様子でも見てくるか。
「戻れっリザードン!」
もし密猟者だったら退治しないとだし。
寒いのでピカチュウを抱いて湯たんぽにしながら山道を下る。雪がサクサクと小気味よい音を立てた。
「ぬおおおお!熱血ぅぅうう!」
「はー温かい、大将ーもうちょっと火力上げてー」
うわっ。予想以上の光景だった。
二槍を持って発火する人間を囲み暖を取る姿が一、二、三。
特性はほのおのからだですか。
「何をしているんだ貴様らは」
「ピカ?」
「……もー俺様何が起こっても何が現れても驚かないから」
人の顔見て溜め息なんて失礼じゃないか猿飛佐助。
輿の上で凍える刑部とニューラを抱えた『私』がぽかんとした顔で、
「三、」
「貴さ、」
「まさか三成殿のお子でござるかっ!?」
何か言い掛けたのを遮り叫ぶのは真田幸村。
何というカオス。主語述語てにをはがごっちゃになっておりますればー。
「ピカピー?」
腕の中のピカチュウが私と『私』を見比べる。…長年共に過ごした相棒を間違えないでね?
「……。実はそうなんだ、私と刑部の子だ」
「ホレ佐吉、ハハの元へ来やれ」
こう言ったら絶対面白そうって顔で何ちゅー事を言ってんだ、何だよ貴様ら両方男だろーが。
この三成……『私』だ。刑部も『アイツ』だ。違ったらそれはそれで嫌だけど、これは間違いないだろう。こんな馬鹿な真似をするのは『私』と『アイツ』以外にいないに決まっている。
「うん、そーだと思ったんだよね、やっぱり二人の子どもなんだねー、俺様分かってたよー」
「さすがだ佐助ぇっ!」
猿飛ィィッ!貴様はツッコミを放棄するなー!貴様のアイデンティティだろうがァッ!
何なの…コイツらの相手すげー疲れるのだが。
えーと、とりあえず…
「父上、母上、その他。とにかく私の家に来い。話はそれからだ」
寒いから家に帰ろう。現実逃避とかじゃないよ。

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