神隠されました。(2/3)

「ところでここがどこか教えてくれないか?」
「なんなんだッ前のページの「うわああああっ」はッ!!」
けろりとした顔の家康に掴みかかるその顔は相変わらずバケモノだ、が。
「ううん…恐ろしい事に見慣れてくるから不思議だ…」
森で出会った山姥は、どうも某小学生新聞で連載されている忍者の卵の物語に出てくる六年生のようだった(格好はアレだけど)。どうやらここは忍術学園の私有地らしい。
いやあ昔好きで見てたよ。誰かコマを突き破っていきなり出てこないかなぁ、なんて。アレってどーゆう原理なのか気になる。
ところでさ、私思うんだ。
「そんなことよりてめぇらどこの手の者か答えやがれだわよ!」
「さっさと答えたほうがいいぜでございますことよっ」
噛み付くように吼えるバケ…ああ、いや…彼ら。これが女装だってんなら無理がありすぎる。べったり化粧を塗りたくった顔面に隠しようもないガタイの良さ……おい、大胸筋が見えているぞ。ったく視界の暴力だ。
…まあ、ユーほにゃららとか妖ナントカの類じゃなくて一安心したってのは正直な気持ちではある。
「あー、うーん」
凄む彼らに家康は困り笑顔で頭を掻く。
さあ、ここからどう出る。貴様のこの後の反応に私たちの未来がかかっている!とゆーのは言い過ぎか。
「…ワシの名前は徳川家康だ、よろしく頼む」
「貴様は何ノン気に名乗ってんだァッ!よろしく頼んでんじゃねーよッ!」
「…で、こっちは石田三成だ」
「勝手に人の名前を出すなァァッ」
「よければお前たちの名も教えてくれると嬉しい」
「聞、け、よ、コラァ!…もうヤだこいつマイペースすぎる」
なんだこの自由すぎる戦国武将。
ふーんだ、名前なんか聞いたところでどうせ答えやしな…
「留子だッ」
「文子だぜ」
「小平子…かなぁ?」
「答えるのかよッッ」
……オイ。
何コレ、私一人だけ疲れてるよ。ここにはボケばっかりなのか。
意気揚々ステキな笑顔で答えてくれちゃって…。
「ワシらは怪しい者じゃない。ただちょっとここがどこか分からなくてこれからどこに行けばいいか分からないだけだ」
「なんだ迷子か」
「まあ、端的に言えばそうなるかなあ?」
「そっかー」
「「あははははははー!」」
「いや…笑いごとじゃねぇだろ」
まったくもって文子ちゃんの言う通りである、同感だ。
何故、小平子と家康は笑い合っているんだろう。家康は当事者なんだからもっと危機感を持ってください。貴様がそんなだから常識人の私が苦労するのだな。
「…はぁ」
「なんていうか苦労してんな、あんた」
「ッ、分かってくれるか!」
「お…おう」
おっと、そう引かないでくれ。労ってくれる人なんかいないからつい…な。
それになんだか留子ちゃんからは同じ苦労人のニオイがするから親近感。
「俺でよかったらよ、グチぐらい聞いてやるぜ?」
ううう、なんていいヤツなんだ。
家康じゃないけどまずは感謝を!
「ありがとう、おじょ、…っ!」
来るのが突然なら帰るのも突然ってか。
暗転、
「「「あああー!せめて『お嬢さん』って言ってから消えてくれーーっ!」」」
最後に聞こえたのはそんな絶叫だった。

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