はじめまして、どちらさま(2/2)

「あ…あの、お茶どうぞ……」
「…」
なにこれ気まずい。
とりあえずお茶を持ってきたけど誰も手をつけない。オレを(にらむように?)見る銀色の髪の女の人も、フゥ太と年が同じくらいの子ども二人も、誰も。
オレの首を絞めてた怖い男の人はまだリボーンとにらみ合っている。ううう…心臓に悪い。
あのあと…オレはなんとか説得して手を放してもらった。
ていうか、
「父上落ちついてください。こんなナヨっとした子どもにこんなゲイトウできませんッ」
一緒にいた銀髪の…女の人とそっくりな子が説得してくれた。それでオレ子どもに子ども扱いされてた…。
それにしてもこの人たちは揃いも揃って和服を着ている。着物の人なんてあまり見る機会がないからちょっとビックリ。でもそれはこの人たちにとっては当たり前の格好、なんたって昔…戦国時代からやって来たらしい。
こんなこと普通なら信じられないけど……まあ『普通』じゃない事態にオレは慣れてしまっていた。悲しいことに。
「てめーナメたこと言ってんじゃねえぞ、その口撃ち抜いてやってもいいんだぞ」
「舐めた事抜かしてるのはテメェだろうが小僧……斬られてェか…?」
「なんかブッソーなことになってるーー!?」
ふと気づけばにらみ合いが大変なことになりそうになっている二人。
オレがリボーンに何か言ったところでゼッタイに聞き入れてくれるワケもなく、だったら男の人のほうをどうにかしてもらったほうが早い。
そう思って銀髪の子にこっそりと話しかけた、
「ねえ…キミ、あの人とめてくれない…?」
「キサマこそあの赤ん坊をだまらせろ」
すかさず返された。
かっ…かっわいくねぇー!
大音量で叫んだ、ただし心の中でだ。口に出したりなんかゼッタイしない。男の人…この子の父親にまたにらまれるなんてごめんだね。
「ねえ〜お願いだからさ!」
「えー……ッチ、しょーがない……はぁっ……父上ー。ち、ち、う、えー」
ね?と手を合わせて拝めば(オレ情けねー)子どもとは思えない深いため息をつきながら行ってくれた。
はーよかった、これでもう大丈…
「おい」
「はっ…はいっ」
び、びっくりした…まさか話しかけられるとは思わなかった。だってさっきまでの様子からしてオレたちのこと信用してない感じだったし。
あーもう、次から次になんなんだよ…。
「本当に、」
女の人は言いづらそうに眉をしかめた。
なんだろう何を言われるのかな、あんまりよくない意味でドキドキして逃げ出したくなる。
でも逃げることなんてできなくて、女の人の刺すような視線を正面から受けてた。
「…本当にッ」
「っ、ひゃいっ」
「知らないのか…その、私たちが帰る方法を」
「…は…い、あの…でも多分、三日か一週間か…それくらいで戻れるんじゃないかなー…とか…アハハ……」
前に十年バズーカの故障で獄寺君が小さくなっちゃった時は確か一週間で戻ったし、今回だって多分同じくらい経てば…多分…勘だけど。
オレの答えに「そうか」と力なくつぶやいて女の人は顔をふせた。
…すっげー気まずい。
でもオレにはどうしようもないことだし……。
「母上、われらもイッショにおりますユエ…そう気をおとさずに…」
黒髪の(おっかない男の人とそっくりな)子が女の人に言う。なんていうか、すごく大人びた子だな。戦国時代の子ってみんなこうなのかな。
その子の腕の中ではランボが泣き疲れたのか、くぴーとイビキをかきながら眠ってた。
こんな事態を引き起こした元凶だってのにノンキなもんだ。…正直お前の存在忘れてたよ。
「ときにサワダツナヨシ、」
「うえあっ!へ…?な、なに…?」
「……しばらく世話になるぞ」
「んなっ…はいぃぃぃぃっ!?そんなことっ急に、言われ…て、も…」
「マサカぬしにキョヒ権があると思うてか?」
あれ?そういえば名のったっけ?なんて思う余裕もない、じろりとオレを見つめるまっ黒い目は不機嫌そうだ。
ぬしらのせいでわれらが厄にみまわれたのだと…思うのだがナ。マサカわれらをそこらにポンと放りだすムタイはするまいよナァ。
クッ、とノドの奥で笑う子どもは見下すようにオレを見る。何か企んでそうなその顔は絶対にこのくらいの歳の子がする顔じゃないのに似合いすぎだ。
超直感とか関係なく分かる、
「め、めっそーもありませんっ!!」
一番敵に回しちゃいけないのこの子だーーっ!

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