苛烈につき大暴走注意(3/3)

「うぅ…ひでよしさま…」
「三成!その傷ワシの絆で癒してや………三成が…二人!?はっ!これはワシへのご褒美だな!ワシの三成への愛が天に届いたんだ!」
寒気がする程お目出度い頭よ。
二人もこんな変態の登場に引いたか…?
「竹千代、そこに直れ。叩っ斬ってやる」
「家康、私は三成ではない」
あ、そうでもない。
壱矢は何やらめっちゃキレとるし、みつは冷静に訂正しただけだ。
「だあああっ!家康を殺すのは私だァッ!!」
沈んでいたくせにがばりと起き上がり抜刀した壱矢を羽交い絞めにする三成。
体格差ユエ押さえ切れるか微妙なところよ。
「三成、まるで父親に遊びをねだるややのようにも見えるぞ」
「冷静に言っとる場合か!ええい刑部ッこのおっさんが家康を殺す前にどうにかしろッ」
やれやれ、元気になったと思うたら…。まったく人使いの荒い事。
「徳川」
「また邪魔をするのか刑部」
黒権現サマは通常運転か…ヤレご苦労な事よ。
「いや忠告を一つナ、そこより一歩とて三成とみつに近付こうとは思うナ。さもなくばぬしの…」
「ワシの…何だ?」
「ぬしの息子を爆破します」
ドーン☆とね。
「ッ!?」
ヒヒ、男どもが顔を青くしておるワ。
「あ、俺様忙しいから…んじゃさいなら〜」
「俺っも畑を見に行かねぇとっ」
猿飛・片倉脱落。別にぬしらにはせぬよ。
さしもの権現にもこの言葉は効いたか敷居のアチラに立ったままコチラに来ぬ。いい気味。
「…?家康、貴様に息子なんて居たのか?」
「みつ、お前は分からんでいい」
壱矢は渋い顔で我を見、それからみつの頭をぽんと撫でた。
みつは不服そうに口を尖らせ眉を吊り上げて怒る。
「なっ!?貴様はいつもそうだ!私だけッ」
「頼むから…本当に、これだけは…!」
「誤魔化すな!」
みつを抱き締めて宥めるように額や頭頂に唇を降らせる男。みつは怒りながらも頬を染めて満更でもなさそう。何なのコイツ(壱矢)、爆破していいっすか?松永先生!
あ、しまった。確か今この場に真田が、
「は、は、破廉恥ー!」
…!耳ッキーンってなった。
最早兵器の域の大音量で叫ぶと真田は走り去った。
真田に文句を言っても通じないのであとで猿飛に文句を言っておこう。
「Hey,石田」
「何だ名も知らぬ男」
「…。この女はアンタの妹か?」
「違う」
未だ居た伊達が三成に話し掛けるが今日は随分と大人しい。
血気盛んに三成に突っ掛かっては撃沈するのが常なこの男にしては珍しい。
「Oh…be one's double.(瓜二つだな…)
「Yah,right.Both persons are dead ringer for ‘mitunari’.(さよう。二人とも‘三成’に生き写しであろ?)
いやに神妙な顔で二人を見ていたと思えば何を言っておるのやら。
二人が似ておるのは当たり前……だがこの男はそんな事知る由もなかったか。
「アンタ…それどういう意、」
「刑部!その名も知らぬ男と何を話しているッ!」
「私に隠し事をする気か刑部!」
ヤレ愛い。真、愛い。
よく似た顔に、よく似た眼差し。目の色は三成の方が少し緑色に深いだろうか。
<知らぬ>を無くそうとする子供のような倣岸さが真に愛いワ。
「教えろ刑部ッ」
「はははお断り」
あれ?独眼竜が大人しいナ、と思ったら…。
奴はみつを?三成を?みつを?見てぽうっとしておった。まさかのマサカですか?
「…beautif…って違ェ!バカッ!俺のバカッ!ンな事言ったら俺が石田(男)の事もそう思ってんのかって話だよッ!ウガアアアッ!」
伊達は一頻り喚いて呻いて頭を抱えると、
「石田ッ今日はこのくらいで勘弁しといてやらァ!」
見事な捨て台詞を吐いて逃げ去った。
伊達よ、ぬしは思ったよりも愉快な男よナ。
「ヒヒヒ、愉快やナ。ユカイ」
「お前も…趣味が悪いな、吉継」
そんなに褒めても何も出ぬぞ?
「なあ!ワシの存在を無視するのはやめてくれよ!」
…我は急に耳が遠なった。

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