若しくはよく似た他人(2/2)

三成と真田と…三成が戯れておる。
三成が真田に羽交い絞めにされた三成の口へと何やら押し込む。
ソレを見届けてから我は視線を其方から外した。
無理矢理とはいえど三成が物を食うたのならば……マァヨイ。
それよりも…
「ぬしは何をしておるか」
今は目の前の此方の方が大ゴトよ。
「見て分からぬか?」
「………」
別の世に生きる己自身だなどと世迷い言。
だが残念ながら真実なのだとこの身体がその不思議を理解してしまう。確かに彼奴は己と同じ存在なのだと感じてしまう。
それは……マ、仕方なしに認めてやろう。
だが、
「解せぬ」
ぬしが我としたら余計にその状況に違和感がある。
「如何したか刑部殿」
「大谷さん?どうかしましたか?」
<我>が巫を膝の上に乗せて我へと語り掛けてくる。
巫は己の腹に回されている<我>の手に一つの抵抗もないようだ。…何なのだこの状況は。
思わず意識を飛ばしそうになった時である。
荒々しく近づいてくる一人の気配。
「大谷ィ!貴様我が安芸の兵に……大谷が、二人だとっ!?」
怒鳴り声を上げる毛利なぞ、我は初めて見たワ。
「わ、我は計算しておら…ぬ、ぞ…」
そして失神する毛利も。
<我>の籠の中から飛び出し巫は倒れた毛利へと駆け寄った。
「きゃああっ毛利さん!しっかりしてください!!」
「あ、」
行き場の無い手を彷徨わせ、それから頭を掻く<我>。
湯たんぽが、と呟いたのを我の耳はしかと聞いたぞ。
「ちょっとそこの大谷さん方、のん気に見てないで手伝ってくださいっ」
「ナァニ…巫よ心配するでない。毛利は昼寝をしておるだけよ」
そう言いながら数珠を繰って毛利を運ばせる<我>なのだが如何せん扱いが雑だ。
足を擦ったり肩をぶつけたり…毛利に哀れみを感じる日が来ようとはナ。
「そうなんですか?…もうっ毛利さんったらお行儀が悪いです!」
<我>の言葉にころりと騙される巫。それに満足そうに<我>が笑う。
「真にナァ」
我の目から見ても…不気味な笑みであった。

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