苛烈につき大暴走注意(1/3)

ふ、と…
「…?ぬしは…何時からそこに居た?気付かなんだ」
人の気配を感じて書物に落とした視線を上げれば、我の正面に三成が行儀良く座っていた。
来たのなら一声くらい掛ければヨイのに…。それとも気付かぬ程に集中していたのだろうか。
「分からない。壱矢と共に居たはずなのだが…いつの間にかここに」
「(壱矢…?)…マァよいわ、一つ茶でも淹れてやろ。ぬしの好きな…」
横にある茶箪笥を開けて菓子を出そうとしたところで違和感。
あ、れ…?
「どうした刑部」
「何、やら…こう、身体が丸みを帯びて…かわゆらしくなってはおらぬか三成よ」
目がちょっと大きいような…唇がふっくらとして色付いておるような…あれ?つか、そもそも女装いをしておる…あれ?
我の三成がこんなに可愛いわけがない。でも、どう見ても三成。
「みつなり?それは一体誰だ。…刑部呆けたのか?」
「…へ?」
何を言うておる。まさかの記憶喪失…ってワケじゃないか。我の事は分かっておるし…。
そう疑問が駆け巡っておる時だ。
「ぎゃー!!痴漢!!!」
「三成の、悲鳴…?」
聞こえて来たのは間違いなく三成の声で、我はこの状況がいっそう分からなくなった。


「いやーすまんかった。みつとよく似ているから間違えた!」
からからと笑う男は石田壱矢、豊臣の将だそうだ。
そして三成改めみつの夫だそうだ。(ッチ、リア充かよ)
ま、あれよ…三成が女だったら〜ていう平行世界から来たのであろう。
先はみつと間違えた三成に抱きついたらしい。
おいコラ!ここは職場であろ!そーゆーのは家でやれよッ!
「大きさが違うだろうが!」
「俺にとっては大した違いじゃねえ。どっちも小せえよ」
「む!私は!遺憾の意を表明するッ!」
右手に三成を左手にみつを侍らせ、二人の頭をぐしゃぐしゃに掻き混ぜながら撫でる男。ぎりぎりと歯軋りして怒りの面相を作る三成をも笑ってかわしておる。
……両手に三成とか何ソレ羨ましい。
「不思議だな。まるで鏡像みたいだ」
「中身に天と地ほどの隔たりが在り過ぎるがナ」
男にされるがままで髪をぼさぼさにしていくみつは男に突っ掛かる三成を見て不思議そうに零す。その様は稚く…何この子ちょう可愛い。
一人でこっそり悶えておったら、
「大谷、この間の、…」
タイミング悪く毛利が来やった。
さて、固まった毛利にどうやって説明しようか。

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