それは、違和

「しかし、行長殿が半兵衛様に何度も異を唱えるもので首を打たれるかとやきもきしたぞ」
俺が冗談交じりに言えば行長殿は澄まし顔で言った。
「私みたいなのがね、一人位居るのが丁度良いんですよ…」
行長殿の言う事には、そうらしい。
「それにね半兵衛様だとて反対意見を唱えただけで打ち首にはしませんよ…。半兵衛様は良く分かっておられる、反対意見の無い策の方がよほど危うい、と…。ただ、今回ばかりは些か強行に過ぎますが…」
「半兵衛殿の事、考えが無いとは思わぬがナァ…」
吉継が言ったきりその場には沈黙が降り、それぞれが思い思いに思考を巡らせた。
豊臣軍の行軍等は基本的に半兵衛様の策に則って進められるが、勿論それだけと言う訳でない。
軍師には他に官兵衛殿も居るし、朝議に出られる武将なら誰しも進言当たり前。
古い考えの国では年功序列のせいで年若の者の意見が通らないことも有るらしいが豊臣軍は完全に実力制であった。おっと、閑話休題。
ところが半兵衛様は今回ばかりは有無を言わさずに意見を押し通した。
やはり、一因は天女…か?
「それにしても半兵衛様は急いておられるような気がしますね…」
行長殿は嘆息混じりに言う。
「天下獲りをか」
「ええ…。しなくても良い同盟まで組んで…。それに態々纏めて相手取るとは…」
「然様よ…何もアレだけの婆娑羅者を相手取らずとも、ゆるりと構えて一国ずつ攻め落とす方が容易かろうて」
無理にでも纏めて討つ理由が何かあるのか…?
「……まるで…時間が無いとでも言うようですよ…」
行長殿の言葉がぽつりと落ちた。

(10/29)
*prev | 目次 | next#



×
- ナノ -