それは、客人

「先程は失礼した」
俺は半兵衛様に言い付かり、天女以下を離れの客間へと案内していた。
「Ha!全くだぜ」
「貴様…政宗様に対する狼藉…よもや忘れてねえだろうな」
黙れ糞餓鬼…と保護者。
何故、半兵衛様は天女共を城に留め置くのだろうか。分からない。
「む、貴殿!甲斐での礼を欠いた振る舞い、許せるものでは無いぞ!」
そりゃあテメェの忍に言ってくれ。
「門の修繕大変だったんだからねー」
忍…どの面下げて言いやがる。
そして何故、俺が接待役なのだろうか…分からない。
「貴様、我の真姫に近付くでないぞ」
「毛利ィ!真姫は俺んだっ!」
毛利に長曾我部…血の気の多い餓鬼ばっかり誑し込みやがって。
「兄さん世話になるよっ」
前田のがある意味一番まともか…見てえ面では無いがな。
「石田さん」
「ああ天女様。先日は失礼致した」
にこりと笑顔を貼り付け天女と相対する。
「ううん真姫は気にしてないから」
女も笑顔の面を被り、腹の底を隠す。
狐め…。
「真姫、ソイツに近付いたら何されるか分からねぇぜ」
「そうそ、さっきみたいに突然怒鳴りつけてくるかも」
「もうっ!政宗ぇ、佐助ぇ、そーゆう言いかたは悪いよ?」
毒にも薬にもならない戯言を吐いている内は…まあ、いい。
テメェが此処を壊すってんならその時は潰すだけだ。
「それでは失礼する」
「あ、石田さん待って!」
部屋から立ち去ろうとした俺を天女が呼び止める。
「…何か?」
「石田三成って人知らない?」
「…サァ存じ上げませんね」
俺は有り得ないという顔をする天女も睨み付けてくる奴等も無視して、今度こそ部屋から立ち去った。

(5/29)
*prev | 目次 | next#



×
- ナノ -