「壱矢殿ぉ!!桜門に侵入者だっ、手を貸せっ!」
「正則殿!?」
それは門を突き破ってやって来た。
非常識にも程が有るだろうよ。
侵入者もとい天女らの謁見は驚くほど簡単に叶った。
例外中の例外である。
多分、俺が散々言った事を確かめるつもりなのだろうな。
秀吉様も半兵衛様も大概危機感ってモノを持ってねえ。
天女は武将共を背に並べ秀吉様に向かい合う。
「どうして戦うんですか?」
名乗って開口一番そう言った女。
秀吉様は僅かに眉を寄せ、半兵衛様は口元を引き攣らせた。
正則殿は唖然として口が開いたままになっている。虫が入るぞ。
「戦なんて悪いことです!」
その言葉に武将共が賛同の声を上げる、メデテェ奴等。
戦しねえで国が立つか。
ただでさえ、堺の港を狙ってちょっかいかけてくる奴が多いのによお…。
「力を追い求めるのなんて間違ってます!」
秀吉様は黙したまま、睨むでもなくただ天女を見る。
「そのせいで傷つく人がいっぱいいるんです」
他にも何か言っていたが記憶に残らねえ奇麗事だけだった。
ああ苛々する。
「それに、ねねさんはそんなこと望んでないよ!」
こいつは何を言っている…?
「ねねさんもきっと反対してるはずだよ」
それ以上口を開くな。
「ねねさんは…」
「テメェが知った風な口を利くなっ!」
突然に怒鳴った俺を誰もが、ただ一人を除いて、驚いた顔で見てくる。
「テメェに何が分かるっ!憶測で物を言うんじゃねえっ!!」
頭が熱くなって、この口を止められない。
「力が有るのが悪いか?否、力が無えのが悪いんだ。戦わずに守れるモンなんか無え!!何の為に秀吉殿が…」
「壱矢」
秀吉様に呼ばれ、我に返る。
…失言だ。
「…失礼した」
俺は視線から逃れるように顔を伏せた。