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ひとくちだけ


「それじゃあ、ちょっと行ってくるわね」


そう言って保健室から出ていったのは鳴上嵐。
彼を見送り保健室に残ったのはある事情を知っているKnightsメンバーのみ。


プロデューサーである名前がレッスン中に倒れた。
特に病弱でもなければ精神的に弱っていたわけでもない。

疲労が溜まったのか高熱を出してしまった。
レッスン中だったKnightsメンバーは大慌てで保健室に運んだ。

佐賀美先生が不在のため鳴上が呼びに行き瀬名が飲み物を買いにでた。






「これで大丈夫なのでしょうか?」

「大丈夫だ大丈夫。水分と冷えピタがあれば解決だ!」


看護に悩んでいたのは司。
雑だが御最もな意見を出したのは一応リーダーであるレオ。

先生がくるまでの処置としてベッドに休ませ冷えピタを探した。


結構な高熱のためか名前顔を赤くさせどこか上の空だった。

そこへ保健室のドアが乱暴に音を立て開かれた。普段とは全く違う表情で勢いよく入ってきたのは凛月。凛月は名前に近づき、顔だけレオに向けて様態はどうかと聞いたら、普通の風邪だったらこれで安静にしてれば大丈夫なはずだ、と答えられ安堵の表情を浮かべた。

しかし若干不安の残る返答だったが凛月に医学に関する知識はないため納得するしかなかった。



そこに買い出しに出ていた瀬名が帰ってきた。
手に持っていたペットボトルの入った袋をレオに渡す。

レオはお礼を言うと、コップに水を入れ名前を起こす。



「それ俺にやらせて」


名前のこととなると何もしないわけにはいかない心情にかられた凛月は、彼女の背を支えレオの持っていたコップを受け取る。

水を飲まそうとするが、名前の意識は朦朧としているのか、口元に持っていっても喉まで通らない。


目も開いているのか疑わしい。

頬は常に真っ赤、病人、うっすら浮かぶ涙、こんな美味しいシチュエーションは滅多にないと脳内で考える凛月だが自分自身と葛藤した。




「このまま飲まないと脱水症状にもなるんじゃない」


このままでは病状がただ悪化するだけだと瀬名が呟いた。
レオはストローを凛月に渡そうと袋の中を漁る。
司は自分の手を名前の頬に当てる。冷たくて気持ちよかったのか目を細めた。

瀬名はふと凛月を見ると、名前が飲むはずだった水を彼が口に含むという不審な行動を目撃してしまった。



レオがストローを持って司の横に並ぶと瀬名は2人の背後へ向かったが……コンマ数秒間に合わず。

司とれおは顔を真っ赤にさせて言葉を失う。

目に毒と思い、瀬名は遅れながらも2人の両目を手で覆った。


「普通場所をわきまえない?」

「脱水症状になるってセッちゃんが言うから」

そう言い放つ凛月の唇は名前共に光っていた。


司とレオは目の前で見てしまい、目を覆れた今でも頬を熱くさせている。
そんな2人を見た凛月は不適に笑う。


「何、口移しは刺激が強すぎたの?」

にやにやしながら3人にウインクを決める凛月。


長居は危険だと思った瀬名は2人の腕を掴んで保健室を後にした。



3人が出て行ったのを見届けると、もう一度口に水を含み名前の顔に近づき、水を送り込む。

彼女は小さく呻き声を上げたが、凛月の脳内変換によって¨甘い声¨と解釈され、名前のベッドへ潜り込んだ。

否定の声を上げるが、病人の力量では抵抗にならず、二人の口が重なり合────・・・



「ストーーーーーップ!!」

・・・──う前に凛月は止められた。


凛月は起き上がり、止めた張本人鳴上に怒声を浴びせる。


「ちょっとなにするのさ…」

「凛月ちゃんこそ何してんの!病人に!!」

「はあ?俺と名前のことなんだから部外者は引っ込んでてよ」

「お姉ちゃんとして名前ちゃんの危機を救わないとね!」



そんな2人を無視して鳴上が呼びに行った人物佐賀美は名前にどうだと様子を聞く。
名前は最初より体調がよくなったようで佐賀美に笑顔で答えた。


暫く経っても喧嘩はやまず、病人の目の前で騒ぐなと先生に成敗されたのは言うまでもない。



凛月は渋々引き下がったが保健室を去り際「また今度ね」と微笑みがら後にした。


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