16雲行きは怪しく
決勝の相手は流架かと思ったら流架のやつはドッペルゲンガーの本物を見付けられなく失格になってたらしい。
よって、よく分からないやつが決勝の相手だった。
脅し文句で少し火をつけただけで勝負がついてしまった。
ふと女子の方を見てみると、
木乃口がステージから降りていくのが見えた。
………なにしてんだ?
「木乃口さん!?」
「面倒くさくなった」
「はう…里保じゃ相手にしてくれないんですか?」
「……違う。だってお前、無効化の上に治癒のアリスじゃんか、面倒くさいっつの」
「めっ…面倒って……酷いです!里保は傷付きますよ」
「…笑ってんじゃん、じゃ」
司会の翼含め客席一同ポカーンとしてしまった。
『あ、えっと、つまりは優勝者は小倉里保だーーっ!!』
会場全体が盛り上がり始めた。
棗も一言何か言ってやろうと女子側のステージに行こうとした、その時、棗は呼び止められた。
「……何だよ、鳴海」
「やぁ棗くん、そんなに睨まないでよ。素敵な顔が台無しだよ?」
「………………」
「って言うのは置いといて」
棗をちゃかすように笑っていた鳴海だが、本題に入るにあたって顔付きが真剣なものへと変わった。
「棗くん、君と最近よく一緒にいる子がいるだろ?」
「……里保の事か」
「そう、その里保ちゃんなんだけどね、
「とても可笑しな事なんだ、
彼女は"今ここに居る筈がないんだ"」
「なっ!」
鳴海が何を言っているのかが
分からなかった。
¨アリス学園¨
不思議な事があっても変ではない
でも、あいつは今ここにいる
ちゃんと笑っているじゃねぇか
なのに、いる筈がない?
知りたいような知りたくないような不安な気持ちが妙に気持ち悪い。
鳴海の表情と同じように
晴れていた空が曇り始めていた
(なんだってんだよ……)
(棗くんは優勝したかな?)
(歯車は廻り始めた)
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