(…あ。今の、)

今、わたしの横を風の様に通り過ぎたあの男は、間違いなく折原臨也だった。一瞬しか顔見えなかったけど、全然雰囲気変わってない。臨也とは高三の時、二週間だけ付き合ってた。卒業式までの二週間。卒業してから、あいつは別れも告げずにわたしの前から姿を消して、連絡も取れなくなって、それ以来。あの頃のわたしは臨也の事が好きで好きで大好きで、わたしの恋はもう終わったんだなあと思って毎日泣いてた。あの頃は可愛かったな、わたし。まあ恨んでる訳じゃないけど。でも多分臨也はわたしの事なんて全然好きじゃなかったんだろうな。今だから分かる。わたしが「付き合って下さい」って言ったら「いーよ」って言って、卒業式までの二週間のうちにやる事だけ全部やって、恋人らしいデートなんて一回も無しで、まあそんな関係。あの頃の可愛いわたしは、それが幸せだって思ってたけど、今思えばあんなの恋人でも何でも無いよね。まあ臨也に恋してたのなんてもうずっと昔の話だけど、今だって別に嫌いな訳じゃない。好きな訳じゃないけど。さっきすれ違った時、もし臨也がわたしに気付いて立ち止まってたらわたしは臨也に何て話しかけてたんだろう。情報収集が得意で観察力が鋭くて興味ある物には執着心がはんぱない臨也が、わたしの横を華麗にスルーしたって事は、わたしの事なんてもう全然興味無いし、もしかして記憶にも無いかもしれない。ちょっと、辛いかも。ちょっとだけね。ちょっとだけ。

(ばいばい。わたしのだいすきだったひと)


ぐちゃぐちゃ曖昧な世界をコラージュ


(100222)





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テーマ「人外ファンタジー」
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