いくら暗い暗い夜が来たからって、本物の闇は来ない。電気が消された一室に注がれる明かりは、カーテン越しの窓の外で、ぼんやりと光る街頭のみだ。わたしの視界を助けるのはたったそれだけの僅かな明かりなのに、わたしに覆い被さる志摩の顔はなぜかはっきりと見えた。暗闇に浮かぶ、欲と本能だけを貼り付けた志摩の表情は、今まで見てきたどの瞬間よりも人間らしく、美しいと感じる。


「寝込みを襲うつもりやったんやけどなあ」

「志摩」

「…嫌がる女の子犯すのは、あんまり好きやないんやけど」

志摩のピンク色が暗闇に不気味に映えて、きれい。下品だという印象しか無かった髪の色は、暗闇ではこいつ以外に誰に似合おうか、という位に志摩を引き立てていた。ほんとうに、きれい。ピンク色に見とれていると、いつの間にかわたしの服は志摩によってベッドの下に放られてしまったようだ。


「抵抗、せえへんのやな」


露わになったわたしの体を躊躇い無く触り出す志摩が、耳元でぽつりと問いかけた。大声を出せば、隣の部屋には竜も子猫丸もいる。まだ起きているかもしれないし、寝ていても眠りは浅いだろう。だから大声を出せばわたしはきっと助かるのだけれど。

(そんなこと、するわけないじゃない)


「志摩」

「ん?」

「わたしの口、塞いでよ。誰にも邪魔されないように」


志摩の口端が、悪そうにつり上がったのがよく見えた。きっと志摩にも同じように見えているのだ、雌犬のようなわたしの表情が。






0508
志摩兄弟にヤラレて、正直お受験どころじゃない





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