自転車を漕ぐ後ろ姿がなんか可愛くてすきになった。ブレーキのキキーって音が恥ずかしくて、ゆっくりブレーキかける所に気付いて更に好きになった。自転車の後ろの「妄想族」と「ドMですみません」というステッカーを見てもっともっと好きになった。学校付近の交差点で見かける、坊主の彼に恋に落ちました。二週間に一回位のペースでしか遭遇出来ないのだけれど、わたしを恋に落とさせるには十分だった。交差点の信号待ちの時に発見するので正面からは顔を見た事が無いけれど、この前チラっと見えた横顔は相当なべっぴんさんだった。そして更に好きになり。(今日もあえたしね!)今、目の前にいつもの彼の後ろ姿がある。半袖に衣替えした彼のたくましい腕が、いつもより露出していて、わたしは若干興奮している。あんなに日焼けするなんて何部なんだろう。めちゃくちゃ背が高いけれど何年生なんだろう。彼の耳を塞いでいるショッキングピンクのイアホンからは何が流れてるのかな。彼は…そーだな、アジカンとかRADとか似合うかも。いつもと同じ疑問が次々にわき上がって来るけれど、答えてくれる人は誰もいない。はあ、それにしてもかっこいいなあ。「あ、ちょっと」紫色の自転車も似合うし、横顔は美しいし、背も高いし。制服からして山王だけど、あそこは共学だからきっと彼女の一人や二人いるんだろう。そんでもって彼の彼女はきっとそうとうな美人なんだろうと思う。そう言う事を考えたら少し悲しくなるけどわたしは彼を見てるだけで十分幸せだから別に平気だ。勿論仲良くなりたいとか、話をしてみたいとか、少しの欲望はあるけれど。「ねー、そこのおんなのこってば!」「………え?」「落としたっすよ、アンタのでしょこれ」誰かに話しかけられて、声のする方へ無意識に首を傾けると、なんとそこにいるのは坊主の彼!だった!!一瞬幻覚かと思って瞬きを十回程繰り返してみたけれど、やっぱりそこに彼がいて、わたしに話しかけている。やっぱり正面から見た彼はかっこ良かった。独特な坊主だけれど、でもすごく似合う。笑顔の彼の手には、花柄のヘアピンが握られていた。「や、あの、」「あれ?違った?」「ううん!わたしの、です」「やっぱり!」彼の右手がわたしの左手を開け、ヘアピンを握らせた。ごつごつして大きくな彼の手の体温が伝わって、わたしはもうなんか頭が爆発しそうになった。ってか、彼がわたしのヘアピンにさ、触った!「アンタいっつもこれつけてたもんね」「え、」いっつもってどう言う意味?確かにわたしはいつもこのヘアピンをつけているけれども!わたしが彼の言葉に質問をしようとした時には、彼はわたしに手を振ってもう自転車を漕ぎ始めていた。わたしも頭がぼーっとしたまま何となく手を振って。そしたら彼はにんまり笑った。ああ、うそ何これ。幸せすぎるんだけれども。あっ、そう言えばお礼を言い忘れた。彼に聞きたい事、たくさんあったのに何も聞けなかった。



(でもいいや、きっとまた会える)

(その時に、彼に名前をきこう)


       



0711
絶賛スランプ中^^
さーーわーーきーーたーーがかけない