いつに無く気合いの入った練習が終わった頃には、外は真っ暗になっていた。体育館以外に電気は点いておらず、校舎は静まり返っている。熱気が籠った体育館から解放され、半乾きの汗が冷たい風に冷やされて気持ち良い。はー、今日も疲れた。持っていたタオルを首にかけて右手をあけ、待っていてくれた彼女の手を握った。


「わり、遅くなっちまったな」
「試合前だもんね。わたし見てるの好きだし良いよ」
「毎日見てて飽きねえか」
「毎日バスケやってる三井に言われたくなーい」
「かっわいくねえ女!」


嘘、可愛くてしかたねーけど。


「なんか口イテーな。最近割れてんだよ」
「大丈夫?乾燥してんだよ」
「舐めときゃ治る」
「あ、待って三井」
「ん?」
「うつしたげる、リップ」


ずっきゅーん。気のせいじゃない筈だ、今俺の心臓破裂した。唇に素早くリップクリームを塗って目を閉じる彼女。破裂して暴走した心臓を必死に鎮める俺。名前の背中に手を回し、俺も少し目を瞑る。名前との距離がゼロになった瞬間、ほんのりと甘いにおいがした。ぺと、重なる唇の感触が愛おしくて、たまらなくて、何故か変に体に力が入った。筋肉強ばってる、ちょうだせえ俺。


「ぺたぺたしてやだった?」
「いんや」
「そっか。好き三井」
「お…」
「うん」
「俺もだよ」
「…うん」


柄じゃない自分の発言に顔が火照るけど、有り難い事に夜の闇がそれを隠してくれる。だけど繋がれた手に滲む汗は闇では隠せない。いつもの事だけど、夜の帰り道って名前が見えないから実際より距離が近いように感じてしまう。んで何か緊張する。そんでまた手に汗が滲む。悪循環だ。はあ、何が言いてえのかっつうととにかく好きなんだ名前の事が。


「名前、明日何も予定ねえ?」
「うん、暇」
「じゃー俺んち泊まってけよ」
「…三井のエロへんたいえろ!…泊まる」
「お前もジューブンえろい」


いかがわしい動悸



March 22
HAPPY BIRTHDAY TO MITSUI !






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