彼女は自分の髪を触る癖がある、それは寂しい時や嘘を吐いてる時とかだ。何時だか俺はそれに気付きそんな彼女を見ていることしかできなかった。 「髪、勿体無いですね」 「そうかな」 ふわりといつものように触れようと彼女の手が空を切った、彼女はハッとしていた。セミロングといった長さだろうか、それくらいからいきなりのショートカット。女の子なら役作りとは言えショックなんだろう。 「…もう悲しい時に触れていた位置にはないんですよ」 「そうだね。ねえ、幽平くん」 少し話し聞いてくれるかなと彼女は苦笑いした、その表情にいつも目を奪われ胸が締め付けられる。今もそうだ、だから頷くのが凄く小さくなっていた気がした。 「昔好きだった人が誉めてくれた自慢の髪だったの」 「そうだったんですか」 「好きだったのにふられちゃってね」 彼女は凄く悲しそうな顔をしていた。その表情の意味はきっとまだその人を想っているからだろう。 「その時髪切って以来伸ばしてた」 だからいつだって俺は彼女の視界には入ることができなかった、だから見てるだけで何もできなかった。でも彼女の想いを止めなきゃ、彼女も俺も辛いままだ。 「だから役作りとは言えショックだったの」 もう一度いつもの位置に手をやろうとしていた彼女の手を止めるため、彼女の手首を軽く掴んだ。 「また髪、伸ばしてください」 頷いて優しく微笑んだ彼女の手の形はいつも髪に触れる時の形そのもので、やっぱり俺は悔しかった。 それはとても残酷な癖 20120222 |