髪切りました | ナノ


 


ふらっと池袋に来た、今日は偶然に一人だった。自分でも珍しいと思う。そんな俺は京平を探していたんだけど、見知った顔の女の子を見つけて手を振りながらその子に近付いた。


「あ…」

「こんなとこで会えるとは思ってなかったよ」


彼女の髪を少し掬ったら、サラサラと髪が手からすぐに離れて行って、なんとなくそれが寂しく思えた。


「それにしても、なんでも可愛いねハニーは」


以前よりも短くなり、少し前髪を変えていた彼女。可愛いけど、先程触れた髪が彼女を表しているように思えて何とも言えなくなりそうになった。


「いやいや、六条さんのハニーになった覚えはないですよ」

「ちぇっ、名前ちゃん失恋?」

「流石六条さん。」

「ってことは当たり?」


頷く彼女に失恋なあ、と俺は思った。相手の男は見る目がないんだな。彼女を泣かせた奴が許せないので、後で聞き出そうと思った。女を泣かせる奴はやっぱり許せない。


「この際俺のハニーになっちゃえば?」

「考えておきますね」


それではと加えて彼女は俺に背中を向けた。あ、やばい。最後の笑顔がとびきり可愛かった。でもきっと彼女は断るんだろうな、と直感した。


「あ、聞き忘れた…」


この手を取ればいいよ



20110604
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