小説 | ナノ





 彼女の本当に大切なものが時折わからなくなる、違う大切さなのだとわかるけれど私には寂しい。寂しくてどうにかなってしまいそうになる。


「昨日、三之助に駅前のケーキ屋のケーキ買っていったの」
「そうか」
「でね、三之助が」


 口を開けば三之助、三之助と年下の男の幼なじみの話しばかり。三之助のことはよく知ってるし、彼女のその気持ちも理解はしてる。理解してるのと、受け入れられるのでは意味が違う。


「もういいからって分半分くれたんだ!ほんと三之助優しいよねー」


 でもスキンシップが過度だと、妬けてしまう。どこにいたって見つければすぐ駆け寄っていってしまい、そして三之助に抱きつく。そんな他の男に嬉しそうに近付く彼女を見るのはやっぱり辛い。


「かわいいしいい子に育ってよかった」
「名前」


 不安になりギュッと彼女を抱き締めた、もうこれ以上三之助の話しはするなと。彼女の笑顔を見る為に聞きたいけど自分を保てない。


「どうしたの滝夜叉丸?」
「なんでもない」


 だから抱き締めることで強がる、違う愛情を信じて彼女の隣に居る。今愛されてる自信や彼女を好きでいる自信はいくらでもある。ただ彼女から愛情を受ける三之助が少し脅威に感じるだけだ。


「抱き締めたかっただけだ」
「なにそれ」


 くすりと笑う彼女、笑顔の見分けはつく。でもどっちが恋なのか愛なのか、一生続くのは、どちらがより強いか、わからずに少しずつ混乱していく。わかってるようでわからない、だからもっと確信的な愛が欲しい。


止まない愛情はどちらへ



20120528
- ナノ -