小説 | ナノ





 恋愛感情なんて向けてもらうことは一生ない。これが俺の長年の初恋の悩みで結論なんだと思う。


「三之助!」
「名前?」


 ひとつ年上の幼なじみ、彼女は俺を家族としてしか見てくれない。大切にしてくれるのは嬉しい、でも感情のすれ違いはずっと寂しかった。


「もう三之助はかわいいなー」
「はいはい」


 抱きしめられるのも、もう慣れた。ただのスキンシップだからここに恋愛の愛情はない。


「ほんと癒やされる。三之助大好きー」
「はいはい。あのさ、」
「んーなに?」


 頭撫でられるのも、子供としか見てもらってないようで嫌やった。たったひとつしか変わらないのに、もっと小さな子と居るような顔をする。


「みんな見てる」
「別に平気。あ、もしかして三之助好きな子できた?寂しいなあ、」


 彼女は俺をまだ小学生の頃と同じような目で見てる。俺はもう大人になれるしな、彼女よりも背が伸びた。なのに何も変わらない、俺は彼女の中で大人になれてない。


「…好きな子はいない」
「よかった」
「でも、みんな驚くでしょ」


 抱きついたまま離れない、勿論俺は抱きかえすことはしていない。彼女を困らせたくないし、結局このままで居たい自分が居るから。


「それに、滝夜叉丸先輩きたよ」
「あ、滝夜叉丸!」


 彼女がスッと離れて行く、心には寂しさが募り彼女の体温が徐々に消えてく。ほんとに幸せそうな顔は恋愛をした人にしか見せないんだろ。こんなに近くで触れられていたのに、手を伸ばしても届かないように感じて寂しいだなんて。


僕の背伸びを君が止める



20120526
- ナノ -