小説 | ナノ





 心臓がきゅってなる、でもまだ恋とか明確じゃない彼への想いなんだ。

「どうしたの?」
「いい天気だなって」
「そうだね」

 柔らかく笑って、くだらない話しにだって付き合ってくれて優しい。園原さんを待ってるだけだけど私の日誌を書くのも手伝ってくれている。

「明日も晴れたらいいね、名字さん」
「青空が見たいな」

 優しい人、笑顔が素敵な人。少し胸が高鳴る、そんな曖昧な小さな想い。こんな短い時間が暖かな少し甘い幸せな時間だと思える。彼はすごいな、なんて単純に思う。

「空見るの好きなんだね」
「うん、大好き」

 だから彼が私を少しでも知ってくれることが嬉しくて堪らない。いつか嬉しかったんだなんて今日のことを笑って伝えられたらいいな。

「竜ヶ峰くん、お待たせしました」
「大丈夫だよ」

 でも誰かの隣で笑ってるのを見るのは寂しいけど心地良いと思える。だから大切にしたい。

「名字さんも一緒に帰ろう」
「一緒に、帰りましょう?」
「お言葉に甘えて、いいかな?」

 この恋が花になるその時までに枯れないでね、今はまだ綺麗な蕾だから。


開花はまだ少し先で



20120321
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