小説 | ナノ





 近くに住んでたのは2つ年下で同じ高校に通う女の子。親が昔からの知り合いらしくてよく家族ぐるみで食事したりしていた

 彼女は大人数があまり好きではないらしく、彼女の兄弟や俺の妹達や俺を少し離れた所から見ていたり極力話さないようにしていた。彼女の親が言うには反抗期や思春期だからと、それでも俺は気になって世界に引き込みたいと彼女を知りたいと思った。


「やあ、家出少女。なにしてるのかな?」
「いざやくん」
「お母さん心配するだろう?」
「別にいいの、大丈夫」


 妹が増えたみたいな感情を持っていたって結局は他人だから、どこから踏み込んでは駄目なのか正直わからなかった。


「俺には大丈夫そうに見えないよ」
「大丈夫だよ、いざやくん」
「君は一人じゃない、君の家族も九瑠璃も舞流も俺もいる」


 それでも彼女に手を伸ばし続けたい、霧で隠されたって手を出せばきっと届く。彼女が誰かを求めている限りこの手を取ってくれる。


「周りを遠ざけなくていいんだよ、ほら帰ろう」
「いざやくん、ありがとう」


 本当に手を包み込めば彼女の心ももう少し温まるんじゃないかって、こんな俺でもその役目ができるんじゃないかって少し期待した。まあ、結局は自分が楽しみたいだけなのかもしれないけど。


手探りな体温



20120613
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