小説 | ナノ





 ヒーローはみんなのもので、彼もヒーローだからそうなる。誰よりも素敵な笑顔だって、誰のものでもない。綺麗な彼の瞳に私は確かに映るけど、私だって彼にとっては守るべき国民の一人にすぎないんだ。優しさだって、笑顔だって彼はヒーローだからみんなに平等に与えられる。


「ねえ、キース」
「なんだい?」
「なんでもないわ」


 悔しい、寂しい。なんてわがままを彼は受け入れてはくれないことを知っている。こうやって隣に居られるのだって良い友人を演じているからだ。彼に迷惑ひとつ掛けずに互いのことを適度に話して、そこらにいる仲の良い友達のように過ごしているだけ。

 彼にとって私は仲の良い友達なはずなのに、彼は一度だって自分がスカイハイだと私には言ってない。何故知ってるかなんて女の勘だって言ってみたいけど、違う。あの背格好や優しさ・口癖・その他…彼じゃないはずがないじゃない。私が気づかないとでも思っているんだろうか。なんでキースは私に教えてくれないんだろう、寂しい。


「今日の君は元気がない、そして悲しそうだ」
「そうね、知ってるわ」


 貴方の秘密を、と続けたら貴方はどんな顔をするのかしら。私は強がって何も言わないけど。それにね、私が貴方を理由に寂しいことぐらいは気付いて欲しいのよ。更に言えばわがままだなって笑ってほしいわ。
全部叶わないことくらいわかっているけれど。


そろそろ秘密を聞かせてよ



20120508
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