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物語の主役には、それ相応な人がいるように、脇役には脇役に徹する人ってのがいる。跡部や侑士みたいなカリスマ性は俺にはない。ただその分、俺には名脇役級の何かがあるんだ。自分で言って虚しくないかと言われれば、ちょっと待てと言わせてもらう。これは第三者から見た物語の話であり、俺の物語では常に俺が主人公だ。だから別に虚しくありませーん。俺のポジションは名脇役、俺の人生自体は主人公。





「で?」
「え?」
「いやだから、で?何が言いたいわけ。てゆーか聞いてるこっちが果てしなく虚しいです」
「がびーん」
「そして古いな効果音。そんな誇らしげに言われたってね、知らないよあたしは」


彼女は果てしなく虚しいらしいが、俺は今限りなく虚しい。違いは不明。彼女の毒舌によって、俺の自尊心は限りなく傷付けられ、多分HPも残り少ない。



「岳人は跡部になりたいんじゃないんだね」
「はあ?やだねあんなギラギラ主張激しいやつなんかっ」
「個性バリバリな髪型かましてる岳人には言われたかないだろうけどね」


…確かにな。
高校生になって、テニスをやりながらも彼女との関係を保てるくらいに成長した俺でも、この髪型だけはやめられないらしい。なんかポリシーというか、俺のトレードマークだからかもしれない。これなくなったら俺だって分かるポイントなくねえか?



「この髪型なくなったら、遠くから岳人だ!って見つけらんねえだろ」
「見つかるよ、余裕余裕」



俺の部屋でポテチをバリボリ食いながら、彼女はチャンネルを回した。
油がリモコンに付きましたよ、ああ、滓を落とすんじゃないよ全くって俺は母親か。









「岳人がさっき言ったんじゃん。主役には主役らしい人、脇役には脇役らしい人がいるって。そういうこっちゃ」
「ちゃんと日本語喋ってくれませんか。指示語問題が高度すぎる」




あからさまに溜息を吐かれたが、吐きたいのはこっちだ。そういうこっちゃってどういうこっちゃ。



「跡部には跡部の役割、岳人には岳人の役割があって、跡部には跡部のオーラ、岳人には岳人のオーラがあんの」
「どんな」
「みんなにはわかんない。あたしも跡部のオーラはわかんない」







意味わかんないんですけど。




俺が相当怪訝な顔でもしていたのだろう、彼女はまた溜息を吐いた。




「岳人はあたしのオーラわかんないんだ」
「、あー。白に近い紫?」
「何だろう、このけなされた気分」












また溜息吐かれるかと思った。俺の予想を覆して、彼女はいつものだるそうな顔から一変、ふんわり笑った。


「俺は?」
「あ、誕生日おめでとう」
「ありがとう、で俺は?」
「おやすみ〜」
「言えない色なのか!」




やっぱりふんわり笑いやがる。


あーあ、そんな顔して…寝かせると思うなよ。

殺せそうなワインレッド(ただし脇役仕様)






Jump High様に提出。

がくちょ誕生日おめでとう!




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