昼寝をしていた。 いつもしているわけではなくて、ただうたた寝程度だったのだがいつの間にか本格的な昼寝になっていたわけだ。こんなことはしょっちゅうさ!なんて言いそうな、兄さんの友人であり我が校の問題児代表であるジェームズ・ポッターとは違って、僕はあいにくそういうテキトーな人間ではない。 だからこんなふうに、女性に寝顔を至近距離で見られることも滅多にない、というか、ない。 「あの、」 「なあに」 「離れてくれますか」 ああ、とか言いながら仕方ないみたいな雰囲気で彼女はどいた。 「あたしのこと、覚えてる?」 「ええ、この間食事会に来てらっしゃいましたよね」 「うん、その時もあなた、すごく眠たそうだった」 何かと思えば至極下らないことを言う。そりゃあ僕だって立派な人間だし、眠くもなる。それがたまたま食事会のときだっただけだ。 「あなたを何度も見かけるのだけど、見る度見る度、眠たそうな顔でいるのね」 「タイミングが悪いんじゃないですか」 「あら、違うわよ」 含み笑いを残して、彼女は授業に向かった。ユニフォームからしてレイブンクローだ。見た目も地味だし頷ける。失礼なのはお互い様だから見逃してほしい、あんな、まるで僕がいつも眠たそうな顔をしてるみたいな言い方して、どういう了見なんだ。 ああ、眠い。 「レギュラス」 「…またあなたですか」 あれから3日経った。 今日は非常に寒い。彼女はマフラーを2枚重ねにしていて、何だかセンスを疑う。 「これ素敵でしょ」 「どちらかというとおかしいです」 「え、そうなの?流行ってるって聞いたのよ、すかした眼鏡のくしゃくしゃヘアの人に」 ジェームズ・ポッターか。 「今日も眠いのね」 「あなたに会うと眠くなります。それより、その流行りの噂は明らかに嘘です」 あからさまにショックな顔をしているが、それは事実だ。同じ色のマフラーをしていて何がお洒落に結び付くのかわからない。 僕の中で彼女は完璧に変人の類にカテゴライズされているし、彼女は間違いなくそうだと断言できる。今日のように変な服装をするだけでなく、変な挨拶(多分日本語)をしてきたり変なポーズ(ぴらてぃす、というらしい)を通路でキメてたり(邪魔)、とにかく一般的見解から言えば非常に謎だ。謎の塊だ。 「ねえ、レギュラスはあれが何に見える?」 「…雲」 「あの雲が何に見えるか聞いてるのよ、馬鹿」 あなたに馬鹿と言われる日が来ようとは、何てショックな日だろう。カレンダーに書いておきたいくらいだ。 そもそも雲は雲にしか見えないし、彼女は意味がわからない。 「あれはくじらぐもって言うのよ、マグルの世界では」 くるくると変わる表情は、ふっと突然凛としたものになる。 「これから、あたしのこともっと知ってね」 知れば知るほど、僕はおかしな人間になるに違いない。彼女のように変な目で見られるんだ。 「あたしといると落ち着くでしょう」 「あなた本当に自意識過剰も甚だしいですよね」 「ごめんね」 悪いと思ってない、ニヤリ顔。 「だから眠くなるんじゃないかなって、あたしといるから」 「…まあそれでもいいですから、」 「いいの!?」 「箸を両手に1本ずつ持って使うのはやめて下さい。さっきから箸についた食事の残骸が、僕のローブについてます」 「ほんとだ、ローブごめんね」 もういいです。とりあえず、僕はもう貴方以外は想えません(だって刺激が足りなくなる)(眠気もなくなる) れぎゅらすがいっぱい様に提出◎ 素敵な企画をありがとうございます。 しお 拝 |