「そういえば、あたしストーカーというか、見張られてるような気がしてたんだよね、入学してちょっとまで」 「何のジョークやねんそれ、おもろないで」 「ジョークじゃなくてまじだから」 痘痕も靨 番外編 桐壷 合宿中にいきなりカミングアウトしてきた条約ちゃんを、財前くん(大方相思相愛)が冷たく突き放す。 そら大層な話やなと言いたいところだが、俺、忍足侑士(謙也より数倍男前)は真相を知っている。 これは自分の身に何かが降り懸かる可能性が無きにしもあらずなので、もう少し黙っていようと思う。心を閉ざす。 「あほだろ侑士」 「…………」 「条約、それストーカーじゃねえよ、侑士の使いだから」 「おい、岳人。何余計なこと言うてんねん」 それに使いってなんやねん、意味分からんわ。 まあ語弊はあるが大概間違うてへん。あれは紛れも無く俺の使い、そこそこの顔した俺の従兄弟の仕業。 「そんなことやろうと思うてたわ」 「はあー?ちょっとは心配しなさいよ人で無し!」 あたしは真剣に怖かったんだから!と何故か財前くんが責められとって、助かったはええけどめっちゃ睨まれてんねん。 怖っ。真剣に怖がらせたんは俺やのうて謙也やんか。 「あ!謙也さん!」 「な、何やそんなけったいな顔して」 「あんた失礼やな」 「お前の方が失礼や財前、先輩は敬わなあかん」 「僕は謙也さんのがよっぽど失礼やと思います」 「うざ!」 …俺は忘れられている。 確実に忘れられている。 いや確かにラッキーかもしれへんけどな、関西人としては侑士先輩が元は悪いんです!みたいな出番を期待してたんや! 今きもい言うたやつ前に出ろ。 「あ、あれは侑士が…」 お、ええぞ謙也! 「条約ちゃんのこと心配やし、お前ちょっと登下校とか見たってやって言われてんから仕方なしに部活わざわざ早う上がって行ってたんや!したら条約ちゃんが財前と歩いてるやんか、何や心配無用かと思てな?それに柔道習うてた言うやん?何か問題なさそうな子や思て止めてん」 べらべら話してご苦労さん。 条約ちゃん途中からごっつ疲れた顔してんねんけど。ま、これで俺は心配性なパートナーを安心させたってことになる。 優しいやっちゃなあうんうん。 「侑士、お前ほんとあほじゃねえ?」 「…は?」 「俺は、四天と夕陽丘が交流あるから、ちょっとお前んとこの金髪に言っとけって言っただけだろ。それを条約のこと怖がらせて何1人で納得してんだよ」 「が、がくと…怖い…」 「は?は?」 「岳人、もういいからいつもの顔に戻りなよ、危ないよ」 「お、危ね」 危ないのは俺や! なんやねん今の顔こっわ! 聞いてへんでこんな怖なるなんて! 「いだだだだ財前痛い!何すんねんいったあ!って芥川!財前も芥川も痛いわあほ!いったあ!また殴りよったでこいつら!」 ふと見ると謙也が財前とジローに殴られ蹴られしていた。ジロー怖い。ジロー笑いながら蹴ってる。財前無表情だし。 「とにかく、侑士先輩はちょっとあたしに嫌がらせしすぎですよ」 「心配しただけやん…」 「はた迷惑なはやとちりだろ」 「ま、いいですけど!」 やっぱり条約ちゃんは天使でした。 いたっ、何で殴るん! げ、ジロー…いやいやあかんて、そらあかんて、そら持って人に向けるもんちゃう。 それはな、ボールを打つもんなんやで?…ぎゃああああ! 「ちゃんちゃん」 「あれちゃんちゃんなの?」「まあ2大忍足はああいうキャラやっちゅー話や」 |