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安易な選択だったことはわかってる。でもどうしようもなかった、呼ばれたら顔を向けてしまうし、返事をしてしまう。

「じろーはあたしを怒らせたいんでしょ」
「ちげえっ、待って待って待って、両方食うっつってんの!…んな怒んなC」

俺の左手には俺を呼んでた限定弁当(羊肉入り)がかかっている。
普段は見向きもしない購買のおばちゃんたちが今日は限定弁当、増量したよ!って寝ぼけた俺の耳にも届くくらいでけえ声で叫ぶから、思わず廊下のど真ん中でぴたりと止まった。そしたらじろー、じろー、買ってよ、あたしはじろーに食べられたいのって囁くわけよ。もう呼ばれたら振り向くじゃん。振り向いたら買っちゃうじゃん。
てか食べられたいとかほんと俺勃つかとおm「死ねくず」
「俺は悪くない!小悪魔な羊が悪い!って何お前俺の分の弁当食ってんだよ!両方食うって言ったろ!」
「うるさい、小悪魔な羊でも食べちゃえばいいじゃん」


俺のために毎日弁当作ってきてくれる条約が、その弁当を食べている。一応テニス部レギュラーな俺は弁当2つは余裕で入るし、両方食べたかった。実際条約が作った弁当はまじで美味い。胃袋掴まれたってのはこういうことか、と納得しちまうくらいだ。





「羊にヤキモチ妬くなんてかわええやん」
「まあ怒って当然だな」
「なんでだよ!俺呼ばれたんだって!」


何だし。



みんなして白い目で俺を見るんじゃないよ。

「そうやなくて、じろー、お前今日何日か言うてみい」
「5月6日」
「せやな、昨日お前何してた?」
「部活だろ〜もうくったくたでさ、ケーキも食わないで寝ちゃ、った…た、んじょうびだったのに!跡部ふざけんなよ俺の誕生日返せ!」
「あーん?しらねえよ、プレゼントもやったろうが」
「部活で誕生日潰れるなんて最悪すぎるC!」

「そうだよなー、彼女とも会えなくて、GW開けようやく会えた彼女とも喧嘩しちゃったもんね、そりゃあ怒る」

滝の言葉に体の動きが止まった。




『GW開け…6日の昼休みにプレゼント渡すね』

って言われたんだ。
なのに俺は愛しの羊に心奪われっぱなしで、条約との約束もすっかり頭から抜けてた。弁当のことなんかで怒ってたんじゃないんだ。




「早く謝りにいきなよ、じろー」
「たき…ありがとな!」


穏やかに笑ってくれたのは滝だけで、他のやつらはみんな俺の感動的な話に飽きてそれぞれに行動し始めてた。薄情なやつらだ。



「、っうわ!」
「条約ーっごめんー…」
「いや別にもういいんだけど、とりあえず離れてくんない」
「何でそんなに冷てんだよ、まだ怒ってんだろ!」

「あのさ、何かじろーが走ってあたしんち来て抱きしめたみたいな流れだけど、あたしマネージャーだからずっとあの場にいたよね」
「ちょっとでも感動と涙を皆さんに分けようと思って」
「死ねくず」
「今日2回目!」
「死ね」
「生きる!

って、何どさくさに紛れて岳人言ってんだし」
「じろー、」
「はい、条約様、何でしょうか何なりと!」


「おめでとでした」


あ、やばい、










「さんきゅ…う…」
寝るわこれ。安心したら、ねむ…。




「寝やがったよ!ほんとうざいっ!」




猫みたいな、大好きな君






遅いけどじろ誕!おめでと、氷帝の若干堕天使◎


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