DBH | ナノ


※変異して夢主と付き合い始めたニール
※若干の9ギャ要素

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はう、と悩ましい声がオフィスに響く。何事かとギャビンが顔を上げれば、あの新人が差し入れのドーナツを置いたカフェテリアでおろおろと動いているではないか。
からかうネタができた、とニヤニヤ顔を歪ませながらそちらに行こうとすると、遮るように現れたのは彼のRK900だった。

「何すんだテメェ」
「ニールから止められたもので」

ニールという単語にぐるりとその姿を探す。姿が見えないと思えば、カフェテリアの壁の陰になっていたのか、コーヒーを一つ持って彼女の側に立った。

「あー?あいつら職場でイチャつくつもりか」
「貴方も人のことを言えたクチで?」
「うっせえ」

ついでに言えばイチャつくの一線を職場で超えたこともある。詳しくは言わないが。RK900の言葉を一蹴し、様子の観察を続ける。
最近減量と筋トレを増やしているらしい新人の様子は知っているので、どうせその辺のティーンの女の子みたくカロリーやら脂質やらを気にしているのだろう。
くだらないと思いつつも耳をそばだてて目を離せないのは、自分の相棒と同じ顔をした彼がいるからだろうか。



「なまえ、決まりましたか」
「う、まだ...お腹すいててどれも美味しそうで...」

やっぱり。
今日持って来られたのは署がある地域で新しくできた人気のドーナツ店で、ここ数ヶ月行列ができているとも聞いている。流行とか人気に弱い女性のことだ、なまえも例に漏れずそうなのはニールもよく知っていた。

「人気のあのお店のだよね?どれか一個にしようとは思ってるんだけど...」

悩んで決められないと言う彼女のためニールが画像からドーナツの分析を始める。なまえの視線を追って気になっているものをピックアップし、成分から商品名、口コミなど全てをダウンロードした彼は、コーヒーを持っていない方の手で説明を始める。

「これはこの店の定番人気商品だ。口コミはいいが、グレーズとバターで、カロリー脂質糖質が今現在設定している量からだいぶオーバーしてしまう」
「うう、だよね...」
「こっちはそこまで人気はないが発売してそこそこの売り上げがあるらしい。バター不使用。硬さについて批評が分かれている。だが間に入ってるクリームチーズは絶品という評価が多いな」
「それかなあ...こっちは?」
「これは新発売らしい。ジャパニーズトーフ使用でナッツとシュガーコーティングなしのドライフルーツ入り新食感のヘルシー仕様。発売して数日だが口コミは良好のようだ」
「じゃあそれ!」
「賢い選択だ」

カフェテリアのテーブルまで選んだドーナツとコーヒーを運んでやれば、ひょっこりとすぐにとなりにやってくるのはわかっている。

「自分で持てるのに」
「僕がやりたいからいいんだ」
「ありがとうニール」

触れるだけのお礼のキス。職場だから大っぴらなアピールするのはかなり嫌がられるからやっていないが、ささやかなこれはこれでいいものだ。ニールはふにゃりと頬を染めてどういたしましてと笑った。



なんとも微笑ましい光景にちょっとゲロりそうだったとはギャビンの談。

「彼らの交際はプラトニック寄りですので...何処かの誰かと違って」
「余計なこと言ってんじゃねえ!」
「相手によって紳士にもなれると分かって俺もホッとしていますよ」
「ア"?!」
「ところでドーナツは?」
「食う!」

あちらはまだまだ未熟なティーンのような恋だが、こちらはもっと未熟な3歳児の相手をしているようだ、とため息をつくギャビンのRK900。しかしその頬は、カフェテリアで仲良くしているもう一体と同様に、愛おしいものを見るように柔らかくなっているのは、署の誰も指摘しなかった。


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