into the woods | ナノ





「ハルっちー!中くらいのおねがい!」
「ハル、こっちも頼む」
「よろしければ、いつもの場所にもお願いいたします」

クリスマス前は、たくさんの人に引っ張りだこになる。
ライブラに入ってからの恒例行事だ。
モミノキを要望の大きさにそろえて作り上げる。
それはそう、クリスマスツリーのために。
呪いから解放されてやっとできるようになったこの仕事が嬉しいのは、私も作り出した木がどんなふうに飾り付けられるのか楽しみだからである。
事務所に設置した木は一番大きくて、ギルベルトさんを主体にたくさんの人が飾り付けに動員されていた。

「ホエ〜今年は大きいのきましたね」
「今年はハルのお手製だぞ〜」
「えっ…ザップさん見てても思うんですけどそういう風に使っていいもんなんです?」

飾りが入った箱を抱えたレオがこちらを振り返る。ザップもなかなか雑な血闘の使い方をするから、不安に思ってるんだろう。ぐ、とサムズアップをして見せれば、マグカップをもって飾り付けを見守っていたスティーブンさんが中身を煽ってゆるりと目を細めた。

「本人がいいから大丈夫だろ」
「がんばったよ!」
「そんなもんです?」
「うん、そんなもん」

クラウスさんとギルベルトさんからもらったシュトレンを切って、口へ運ぶ。ほんのりスパイスと、たくさんのドライフルーツと、ラム酒の香り。とてもおいしい。
木をつくるたびにこうやってもらえるお駄賃で私は潤うし、悪いことはないからいいのだ。

「はい、どうぞ」

もう一切れとって、両手がふさがるレオの口元にシュトレンを持ってぱかりと開いた口に放り込む。もぐもぐと数回咀嚼したのちに呟かれた、んま、という声に頬が緩んだ。

「今年は誰が星のせます?」
「ツェッドかなあ、あいつ初めてのクリスマスらしいし」
「クリスマスパーティーのメニューですが、こちらを追加したいと考えておりまして」
「むぅ」
「うちの子の飾りつけ動画見る?可愛いわよ〜」
「お、いいところに場所空いてるじゃん」
「ってぇ犬女!踏み台にすんじゃねえ!」
「豪勢にやてってんな〜、ほら差し入れだぞ〜」
「フィリップさん、これはどこに…」
「あちらにございますよ」
「あっソニックそれはだめ!」
「ハル、俺にもシュトレン一切れくれ」
「いいですよ」

いろんな音と光が溢れる事務所のなかで、切り分けたシュトレンをスティーブンさんに渡して、ギルベルトさんお手製ホットワインのマグカップを両手で包む。暖かなそれに、眩い光景に目を細めてほう、と息をついた。

「ここにいて、よかったなあ」
「ん、そーか」

わし、と頭を撫でられる。

「僕たちも、ハルが諦めないでいてくれて嬉しいよ」
「...はい!」
「来年も頼むぞ」
「もちろん」

これからも、来年もこの人たちと騒がしい日常が過ごせますように!

(ハッピーホリデー!)




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