pkmn | ナノ


07



「それじゃあなまえ、また会いましょう」

あれからたくさんの検査を受けさせられた後、すっかり日も傾いたころ病院を出て、カミツレさんとはポケモンセンターの前でお別れした。なんでもポケモンセンターにわたしの保護者が来るから待っててほしいとかなんだとか。誰だそれ。
知り合いでもまったく知らないんだけど、まあ放り出されるよりはマシか、と頷いた。
ほぼ見ず知らずのわたしに付き合ってここまで来てくれた彼女に改めて頭を下げると、友達だから当然よ、と返された。大人だ。

「あ、貴方のライブキャスターにわたしの番号を入れさせてもらったわ。たまには連絡してね!」
「えっ、はい!もちろん!」
「楽しみにしてるわ!」

スワンナに乗ったカミツレさんが見えなくなったころ、ポケモンセンターに入った。しばらくボールの中に入ってもらっていたグラエナを出して、休憩スペースのソファーに座る。
開くのはもちろんさっきのファイルで、膝に顎を置いてくつろぐグラエナをなでながら目を通す。

薄いファイルの中に閉じられていたのは、プラズマ団に関する新聞記事や雑誌の切り抜きだった。

「ホウエン地方出身のトレーナーが、プラズマ団員の持つポケモンの暴走に巻き込まれ負傷。逃げ遅れた子供を庇い逃げ切れなかったという。トレーナーは意識不明の重体…暴走したポケモンはバッフロンとみられ…バッフロン!?」

ものすごいものに巻き込まれたもんだ。これなら若干のタイムラグがあって記憶喪失になっても疑われないな、とちょっと安心する。ほら、頭のケガっていつダメージが来るかわからないっていうし。あれ?言わない?

記事はプラズマ団の解散のところまでで内容が終わっていた。Nは一人のゼクロムを仲間にしたトレーナーに敗北し、どこかへ姿を消したらしい。
それ以上の情報は載っていないが、なんとなく記憶してるBWの内容とは違わなかった…。

「はあ」

手持無沙汰になってしまって膝でくつろいでいるグラエナを撫でまわしているうちに日は沈んでしまう。このまま誰も来ないと宿にあぶれるんじゃないだろうか。おなかもちょっと空いてきたし、グラエナやフライゴンもごはんを抜いて良い訳がない。みんなでくいっぱぐれる可能性もある。
そんな生存に関わる問題を本気で考え始めたそのとき。

「いた、なまえ!」
あっはい来ました、待ち人。なんて良いタイミング。声がした方を向けば、緑色で、葉っぱみたいな前髪をした同い年くらいの男の子…。

「ジムリーダー…」
「あー、ジムリーダーは辞めたんだ…本当に記憶喪失なんだね」

なんだ、恵まれてるのかこれは。
サンヨウジムの元ジムリーダー、デントさんが心配そうな顔をして、肩のヤナップと顔を見合わせていた。

「僕たち、君を迎えにきたんだけど…」

一体、こうなる前の自分はどんな人間関係だったのか。
ちょっとだけ、眩暈がした。

ぼくは二度目まして



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