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04



そんなに深刻な話だとは思っていなかったらしいカミツレさんは、話をしていくにつれてだんだん顔が険しくなっていった(もちろん、トリップとか転生とかそういう話は抜いて、自分についての記憶が名前を除いてほとんどないという話だけをした。ややこしいことにはしたくないし)。

グラエナの道案内でここまで辿り着いたといえば、あなたのグラエナは賢い子なのね、と褒められた。チラリと見れば彼は誇らしげに足元で胸を張っていた。

「そうだったのね…」

どうやら彼女にとってわたしとのバトルはここ最近のそれでは一番楽しいものだったらしく、2度目の(わたしは初)対面にも関わらず親身になってくれた。

ちなみにどんどん痛くなってきた何かが頭痛とは違う後頭部の痛みに思わず顔をしかめてしまい、カミツレさんの心配を加速させてしまったのは言うまでもない。

「とりあえず、頭の痛みは大事になりかねないわ。病院に行きましょう。わたしもついていくわ」
「で、でもお仕事とかは…」
「わたしに話してくれたということは、なまえさんがわたしの助けを必要としているということ。放ってはおけないわ」

それに今日はオフなの。だから大丈夫。
そう言ってほほ笑んだ女神をきっとわたしは一生忘れません。

「それでさっきそんな顔をしたのね」
「へ?」
「忘れ物のライブキャスター。そういえばわたしの名前も憶えてないのかしら」
「あ、えーっと…そうですね…」

これ、ライブキャスターだったのか。確かにそれっぽい機械だし、ポケモンでイッシュの機械と言えばライブキャスターかもしれない。それに名前は内心で一応知ってるんだけど、と思いながらごめんなさい、と呟けば、謝らないで、と返された。

「それじゃあ、改めて自己紹介ね…わたしの名前はカミツレ。ここライモンシティのジムリーダーよ」
「…なまえです。よろしくお願いします、カミツレさん」

やっぱりさっき引き留めて正解だった。カミツレさんには感謝してもしきれない。

「ここから近いのはこの街の病院なのだけど…もしかして荷物の中に診察券とかは入ってないかしら。行き慣れた病院があれば、そっちに行った方がいいわ」
「! 探してみます!」

そうだ、荷物。さっきグラエナに漁られたウエストポーチを見やすいように前に回し、がさごそと中身を掻きまわしてみた。モンスターボールに傷薬、木の実入れ、CDケースのようなもの(きっと技マシンだ)、他にも本当にいろんなものが入っていてこの中によく入るな、と呆れるくらい入っている。
その中で見つけたお財布の中身を確かめると、確かに診察券らしきものが入っていた。

「ありました!えーっと、なんて書いてあるんだ…サンヨウ、そうごう、」
「サンヨウ総合病院ね、そこに行きましょう」
「つ、つくづくお世話になります…」
「気にしないで!困ってるときは助け合わなきゃ。あとは移動手段なのだけれど…パソコンは操作できる?」
「なんとか、できます」
「じゃあ、そらをとぶを覚えているポケモンを連れてきて。わたしはもう手持ちに加えてあるから」
「はい!」

パソコンに駆け寄って、さっきやったようにIDカードを通す。
立ち上がったパソコンから連れてきたのは、フライゴンだ。

一応、私は記憶を失ってて初対面だから、顔をみて話しておこうとボールから出すと、よほど心配されていたのか、2.0mの身体にタックルを決められてしまったのはまた別のお話。


踏み出す準備をしよう





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