novel | ナノ


◎擬人化設定

「っひい!」

下を向いて分厚い本を読んでいたらつつ、と冷たい指でうなじを後ろから撫でられて、ぞぞぞと鳥肌が立った。油断してた。驚いて口から零れた声は引きつって部屋の中に木霊する。首を両手で庇って振り向けば、いたずらの犯人は不敵な笑みでこう言い放った。

「おや、もう少し色気のある声を出してはどうです?」
「色気なんて欠片もなくて悪かったね!」

わたしが強気に言い返すとルビーの目がくすくすと笑って細められる。犯人、もといノックアウトはわたしの背後を取るのが最近のお気に入りらしい。

「気配消して立たないでよ」
「気づかなかったのはナマエ、貴女の方ですよ?」

くすみがどこにもない白い手が、またわたしの首筋をなぞっていく。背骨や筋をなぞって存分になで回す手は楽しそうで、ぞわぞわする感覚がなんとも言えない。

「人間というのは、急所をこんな薄い皮膚一枚で覆っているというのに...どうしてこうも無防備なんですかねえ」

手は首筋を離れて、椅子に座るわたしのお腹へ。後ろからホールドする形で、ノックアウトがわたしを捕まえた。離せと一応もがくものの、もともと機械生命体が擬態しているだけあって力が半端なく強い。やすやすと抑え込まれたわたしは早々に抵抗を諦めた。
こうなったら、彼が飽きるまで付き合うしか解放される方法がない。

「でもそのおかげで、こうやって...」
「ひっ...やっ...」

ぺろり、と赤い舌がうなじを撫でる。思わず漏れた声に頭を動かして振り返ると、色っぽい目で笑ったノックアウトと目が合う。

「おや、今のは次第点ですね」

うるさい、と反論した声は震えて、力が入らなかった。


いろめく指先

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