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今回の生気はイマイチだったし、またあと1週間後には新しい男見つけないと。
今度はもっと割り切るいい男がいいなぁ…
スマートで、筋肉質で…あ、やっぱ顔もそれなりにあるやつがいいなぁ…。
自室に戻った俺は、シャワーを浴びながら早くも次の男について考えていた。
生気を得たからって、ゆっくりしている暇はない。つねに生気は時間とともに、つきてしまうものなのだから。
今回俺を抱いた男からもらった生気がつきるのが、この様子だとだいたい1週間後。
それがつきるまでに新しい男に抱いてもらわなくてはならない。
次の男までのタイムリミットは1週間。
ま、いまの俺だったらさほど苦労もなく次のターゲットを探せるとは思うんだけど…。
もう学園のいい男は食いまくった気もするしなぁ。
「1週間かぁ…。ん〜次は、もっとえっろえろなセックスしてくれるやつがいいかもなぁ…。んっ…」
男の残滓をアナルからかきだして処理していた途中、己の指が俺の感じる場所をひっかいてしまい、ついつい艶めかしい声をあげてしまった。
散々抱かれほぐれたそこは、少しの刺激でもすぐ反応してしまうらしい。
ずく…とまた身体が抱かれたときのように熱くなっている。
数分まで男に抱かれたばかりだというのに…。
べたべたとやった後も触ってくる男に嫌悪感を感じていたのに、一人処理中に感じるなんてほんと、俺の身体はエロくできている。
シャワーを持っていないほうの手で、ペニスをつかみ己を高めていく。
「んっ…は…っ」
熱い吐息が、室内を反響する。
気持ちいい。ひとりでやるのも…。
やっぱり男だから、ペニスを刺激すれば簡単に欲に飲まれてしまう。
あんなに抱かれたのに、再び俺のペニスは起立していた。
男が下手だったから、あんまり射精していなかったからか…?
シャワーの水圧の刺激とともに、自身の手腕による快楽に俺のペニスは絶頂へと導かれる。
「ーーーあ…んんん…」
親指で密口をぐるりぐるり、と何度も円を描くように動かせば、もうたまらなくて。
ひときわ高い声をあげると、同時に俺の欲望は爆ぜた。
「はぁ…はぁ…」
荒い呼吸を吐きながら、浴室の壁に背を預ける。
手を伸ばし、持っていたシャワーノズルをシャワーフックにかける。
白濁が浴室のタイルを汚した。
すぐにシャワーの水で白濁は流されたものの、俺の熱はすぐにはひかない。
「ん…」
俺はそのままずるずると浴室に座り込み、宙を仰ぎ瞳を閉じる。
シャワーのしぶきをあびながら、そっと息をついた。
あんなにさんざん、やったのに…。
俺って、やっぱ淫乱なんだなぁ…。
つきぬことのない欲望に自身がまごうことなくインキュバスの血が流れているのだとしる。
淫乱でエッチ大好きなセックスしないと生きていけない娼婦のような存在なのだ…と。
男を誘い、快楽を貪る度に痛感するのだ。
気持ちいいことは好き。
セックスも嫌いじゃない。
でも、セックスのあとは虚しさもあるし、終わった後はべたべたと触れて欲しくない。
俺はそんな身勝手なインキュバスなのだ。
誰にもしばられず、セックスだけを強請る淫魔。
インキュバスの血が目覚めたはインキュバスは生気がないといきていけない。
もし、生気がなくなったとき、その時は飢餓感で死んでしまうという。
セックスは事態は嫌いじゃない。
気持ちいいことはむしろ好きだ。
でも、そんな俺でもたまにだが、身体を重ねる行為に虚しさを感じてしまうことがある。
インキュバスにとって、誰かと寝るのは食事をすることのように気軽で、でもなくてはならないものなのに。
虚しさなんて感じる必要ない行為のはずなのに、終わった後、漠然とした虚無感に襲われてしまうのは何故だろうか?
「所詮、インキュバスはインキュバスでしかない…。天使みたいにおきれいな存在じゃないのだから…」
皮肉混じりに言葉をついて、閉じていた瞳を開く。
目を見開いた先、湯気で曇った鏡があった。
鏡を塗れた手で拭うとそこには、塗れた輝く銀髪に白い肌をした男…俺がいた。
「この身体は男のもので…、そして、インキュバスのもの…。もう何人モノ男をしる…淫乱なインキュバスの身体…
男なんかすぐめろめろになっちゃう身体なんだから、もっとほこったっていい…。そうさ、空しさなんて感じる必要もない」
自分に言い聞かせるように、鏡にむかっていう。
当然、返事はない。
きゅ、とシャワーの蛇口を締め、俺は浴室を出た。
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