7周年/狂気的独占欲 | ナノ

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「ん…ああ…」
「もっと締め付けろよ、淫乱」
「んんん…」


艶めかしい声をあげながら、ご要望通り、中のものをしめつけてやれば、偉そうなことをいってさんざん人を詰っていた男はうっ…と、うめき声をあげた。こらえるように眉をよせ、俺の腰をかき抱く。


ハァハァ、と荒い息をこぼしながら、激しいピストンを繰り返し、俺の中を抉るように激しく荒らしていった。


俺も俺で男を喜ばせるように、男の中挿にあわせ、腰を揺さぶってやった。
まるで男を味わうかのように、アナルは柔らかく男を包み貪っている。
戯れのように口を合わせると、吐息までも奪われた。


「は…、こんな…」
「ん…」
「詐欺だろ…こんなの…」


男は興奮を隠さぬまま、腰を突き上げる。
ぐちゅぐちゅ・・・と、アナルは泡立つほどの精液であふれていた。


男が俺の中でいったのは1度や2度じゃない。
ぷっくらとお腹が膨れるくらい、吐き出された。
もう何時間交わっているだろうか。
それでもいっこうに男のペニスが萎えることはなかった。
まるで抱きつぶすかのように男は何度も俺の中に欲望を注ぎ込む。

「すげぇ…しめつけ…」


飢えた野獣のようにがつがつと乱暴に俺の身体に己の楔を打ちつける。
獣のように理性なく必死に腰を振る様は、どこか滑稽にみえる。えらそうなことをいっても、肉欲の前ではあらがえないらしい。


もう何度も男に抱かれ、男を喜ばせることを覚えてしまったアナルに、最初は俺を娼婦だのいっていた男もいまや、夢中になって腰をふっている。
俺のペニスをたまに触れながらも、もっぱら自身の快楽を追うのが優先らしい。
身勝手な男だ。
まぁ、俺も、だけれど。


そんなに感じていないのに感じているように嬌声をあげてやれば、男は額に汗をにじませながらも嬉しそうににや…と笑う。


「ん…は…っ」
「おまえも…いいんだろ…」
「うん…」


パンパン、と肉と肉のぶつかりあう音と水音が淫蕩な空気が部屋を支配する。
どろどろと、どちらともない白濁が太股をぬらしていった。

「もっと・・・」


甘えたように耳元でねだり、男の首に腕をまわす。


「もっと…ちょうだい…」
「…」
「もっと・・・」


もう何度といっているはずなのに、男のモノはいっこうに萎える気配はない。
何度も何度も俺のアナルにたたきつけるように性を吐き出している。


テクはまるっきりないけれど、何度いってもばてないのは俺としては好都合。
もっと汚してもらい、中に注いでもらおう。
俺は男の耳朶を含みながら、男にぎゅっとしがみつく。


「もっと…もっと…ちょうだい…
あついの・・・おれに・・・」
「・・・っ・・・ー!」


男は息をつめながらも、何度めかの熱い飛沫を最奥に吐き出した。
おとこはいっても俺の身体を離さない。
ぎゅっと俺の身体を抱きしめて、最後の一滴までそそぎ込むように、腰を揺すった。











 ーー今日の相手は元気だったけど、テクがいまいちだったな・・・。
生気もそんなに極上のものでもなかった。
時間の無駄だったかもな・・・。ほかの男ひっかけたほうがよかったかもしれない。


セックス後のけだるい身体をベッドに投げ出しながら、ぼんやりと今日のセックスを思い出す。
終わったあとの倦怠感があったが、生気をそれなりに貰えたおかげか、やる前ほどの飢餓感はない。もらった生気もきちんと返還され力となっていた。


今回は久しぶりにいい男が捕まらなくて飢えていたから、危なかった。
あと少しで力がなく俺は飢えで死んでいたかもしれない。


 今回、俺が相手に選んだのはひとつ年上の、あまりいい噂のない先輩だった。
なんでも偉い天使かなにかの息子で、すっごい鼻持ちならないやつらしい。顔だけはよかったからいいかな…って、誘ったんだけど。


えらいとこのおぼっちゃんの生気にしてはイマイチな気もするが・・・まぁ、ありがたく頂けたからよしとしよう。
テクはイマイチで気持ちよくなかったけど、生気がもらえただけましだ。
インキュバスである俺にとって、もらえた生気がちゃんと身体に魔力となって返還されるかされないかは死活問題である。
ただのやられ損の場合もあり、その場合はまた新たな男を捜さないといけないのだから。


今日の相手はセックスはイマイチだったが、ちゃんと生気をゲットできたので及第点といったところだろう。
いいところのおぼっちゃんで、それなりに女にモテていたこともあり、期待して抱かれたものの、ちょっと期待はずれだったかもしれない。


この生気はそんなに上質なものでもなかったから・・・もって1週間ってとこか・・・。
1週間のうちにまた新しい獲物でも見つけておこうか。それとも前の男でもひっかけるか。
今やった男はいまいちだったしな。
遊び慣れた男らしいから、期待していたのにな…。


隣で、同じように身体をベッドの上で投げ出している男は、セックスが終わったのにも関わらず俺の身体に性的な意味を込めて、べたべたと触れている。


まるで、ピロトークを楽しむ恋人のように、その手はゆっくりと俺の身体を這った。
気持ち悪い。
肌と肌が触れ合った熱がやっているときはそうでもなかったのに、今はスゴく不快に感じる。


終わったんなら離して欲しい。
用が済めば、こんな男にようはない。
酷い言い方をするが、俺にとってこの男はただの生気の為の餌だった。
男にとっても、俺はただの欲を解消する、性奴に近い扱いだったはずだ。


『ねぇ…、俺に精液ちょうだい?』
そういって誘いをかけて、男は簡単にのってきた。
そこに愛なんかない。
ただ、お互いの欲を解消するだけの間柄だったのに。


男が俺の隣でセックスの余韻に浸っているのに対し、俺の身体はすっかり冷え切っていた。
セックス中は欲を伴い赤くなったいた瞳も、いまは元の灰色に戻ってしまっている。
いまは、すっかり心は冷め切っていて、男からすぐにでも離れたかった。

「・・・すげぇ・・・よかった・・・」
「そう・・・」


よく言われるよ、と続く言葉は言わない。
言わないほうが夢見させてあげられるだろ?


「それはよかったよ…」
熱くうっとりと吐く男に対し、俺はひどくさめた返事を返した。


あれだけ激しいセックスをしたにも関わらず、俺の心は醒めていて、もはや男は用済み扱いになっている。
男に対する愛はもちろんない。


 俺の身体は実によくできていて、用がすんだらたいていどんな激しいセックスをしても余韻に浸るなんてことはなかった。
セックスのあとは、身体を重ねた相手一緒にいたいと思うこともなく、一秒でも早く離れたいと思うことのほうがおおい。
余韻よりも、終わってしまったむなしさのほうが強かった。

インキュバスなんだから、セックスが終わったあとも男を誘い虜にするなり甘いピロトークで誘惑すればいい。ほかのインキュバスはもっとセックス後も楽しんでいるらしい。
しかし生憎、俺にとってのセックスは生気を得る為だけのものであり、それ以上のものでもそれ以下でもない。
だから、セックスを終わった後は身体を重ね合った相手でも、必要以上に側にはいたくないのだ。


「なぁ・・・」
男は情欲に塗れた掠れた声で俺の耳元でつぶやく。
もう1ラウンド・・・とばかりに俺の腰を引き寄せようとしたが、俺はそれをするりとかわしベッドから離れた。


つぅ・・・と男がさんざん出したものが足をつたい、床へこぼれる。
まるで粗相してしまったような、いやな感触に一瞬顔が歪む。
この感覚は、もう何度誰かと身体を重ねてもなれない瞬間だった。


白い白濁が床を汚すが拭く気力もない。どうせ男が後かたづけはするだろう。


脱ぎ捨て床に投げ出してあった服を拾い集める。

「やるだけやったら、終わりなのかよ・・・」
服を身につけて、帰る気満々の俺に男は不満をいい、口を尖らした。

「ああ。もうかえるよ・・・」


俺は淡々とそういって、男に背を向ける。

「まだいればいいじゃねぇか・・・。
「からだも早く綺麗にしたいし・・・」
「んなの、俺が洗ってやるよ」
「それに明日も早いんだ・・・」
「んなの、大丈夫だろ。あと1ラウンドくらい。なにせ淫乱インキュバスちゃんなんだからよ・・」


男は俺を卑下するが、内心俺を抱きたくてたまらないんだろう。目はぎらぎらと血走って、俺を見て欲情していた。
馬鹿な男。
くすくすと馬鹿にした笑みを浮かべたい衝動を耐えて、やんわりと口元に笑みを作った。


「いや・・・、かえるよ」
「あ?やったらかえるのか?ムードねぇな・・・。本当にインキュバスってのはやるだけの為に生きているんだな・・・」
「ああ、そうだな・・・」


男の見下した言葉に反論する気力もなかった俺はおざなりにそう返して、部屋からはやくでようとドア前へと向かう。


「…なぁ…。」
「んじゃ…。サヨナラ…」


一言そういって、俺は部屋を出た。
去り際、焦ったように男が「今度いつあえる?」と声をかけたが、それは聞かなかったことにした。


いつあえるもなにも。
もうあうつもりはないのだから…。
生気が極上でない男は1回まで。
それが俺の中で決めたルール。
身勝手だけど、どれだけ縋ろうが面倒な男からは雲隠れする。





「しつこい男は嫌いなんでね…。
しかもテクなしだしな…。
あ〜あ、どっかに適当な男落ちてないかなぁ…」





ふあああ…と、あくびを噛みしめながら、俺は自室へと戻っていった。



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