7周年/狂気的独占欲 | ナノ

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今日も今日とて、お綺麗な天使様に勝手なやつあたりで、ぼこぼこにされた俺。

 ジェイドが新しい恋人とラブラブとの話を聞いたからか、今日のジュネの暴力は酷かった。
腹の一部がグロテスクな紫に変色するくらい、激しく苛まれてしまい、普段から殴られたり蹴られたりしている俺なのに、一瞬痛みで気絶しそうになったくらいである。

図太くふてぶてしい性格になったので、ちょっとの暴力じゃ屁にも思わないのだが、今回はちょっときつかった。
体のあちこちが悲鳴をあげているよう。
常に痛みが身体を支配していた。


痛む身体を引きずり、学園を出たときには、既に日は沈みあたりは暗闇が広がっていた。
夜空には大きな月が輝いている。
ほとんど欠けているところがない、綺麗な球体がそこにあった。
そういえば、明日は満月だった気がする。
月が放つ光が普段よりも輝いて見えた。
少し月をみて血がざわめくのは、明日が満月だからかもしれない。


俺は夜空の月を視線にいれながら、学園を出て寮がある方向ではなくマルビスの森深くへと足を進めた。


 インキュバスは他の種族と比べ魔力はない。
さらに俺は、あまり魔力が効かない体質でもあった。

この世界にいるものならば、身体が傷つけば治癒魔法をかけるのが普通であるが、俺の身体は魔力が効きづらいのもあって、傷ついたときは薬草を使用し傷を癒す。

体力を回復させる薬草はこの世界は貴重なものであり、とても高価な値で取引されていた。
実際、ほとんど階級が上位の天使や魔族の手に渡り、俺のように下級魔族の手に入ることなんてほぼないに等しい。


この学園に入るまでは薬草なども滅多に使うことはなく、傷ついたときも自力で治していたんだけれど…俺にとって一つ朗報だったのは薬草と同じく傷を癒す湖をこのマルビスの森深くで見つけたことだった。

マルビスの森、木々に隠されたようにある湖。
この学園からは少し距離がある場所に存在する湖は、森深くにあるからか、いつも人気はなく閑散としている。
その湖は一見するとただの湖…なんだけれど、実際にその湖の水を身体に浴びるとたちまち傷はふさがっていく。不思議な湖なのである。
とくに満月に近い日は傷を癒す力も高く、どんなにぼろぼろで血だらけになって動けない傷でもすぐになくなってしまうくらい、ヒーリング能力が高い湖だった。


今日も傷を癒してもらおうとすぐに学園寮に帰らずに湖の力を借りようと森深くへ向かっていた。



 マルビスの森深く。
今日も森の中、ひっそりと湖は存在していた。
シン、とした空気の中、湖の水面をダンスするように光の精霊が楽しげに舞っている。
ほんわかとした光の精霊の淡い黄色の光。

月明かりの下、水面に映る月と、光の精霊が放つ光はとても幻想的で…。

「…綺麗だな…」
思わず感嘆の声が漏れた。


光の精霊は手のひらくらいの小さな精霊だ。
精霊といっても、力はとても非力で夜にしか姿を現さない種族である。
大精霊ともなれば知恵もつくし、感情も豊かになるのだが、魔力覚醒もしていない、小精霊は知恵はなく言葉も喋れない。
夜にしか現れないのは、非力で知恵もないから…らしい。
特にきれいな水辺を好んでおり、少しでも水が汚れた湖には姿を現さないらしい。

 俺が湖に近づいても、精霊たちは逃げようとせず今日もふわふわと楽しげに湖の上に漂っていた。

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