7周年/狂気的独占欲 | ナノ

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 おきれいなジュネ様初め、周りのやつらはこんな地味でさえないやつが同じ学園というのが気に入らないのだろう。
俺はジュネがびっくりするような家柄もなければ、魔力もない。


 この学園は、大半がいいところのご子息であり、入学条件も厳しいときく。
この学園は優秀な生徒を数多く排出しており、卒業してからは神テオスや魔王サタンに目をかけられるものも多い。
テオスとサタンの側につくことこそ、この世界では一種のステータスになっている。


元々、俺がいこうとしていた学園はこんな両家子息が集まるハイソな学校ではなく、古びたけして両家子息なんか集まらない、寂れた学園の予定だった。なにも俺がきたくてこの学園にきたわけではない。

 しかし、ある男のせいで俺はこの学園に行くことを余儀なくされている。


「ほんとにいらいらするよ…。
お前みたいな地味なやつと…、それからインキュバスみたいな娼婦は…」

ジュネは地味なやつも嫌いだが、インキュバス自体も嫌いらしい。
俺の仮の姿は悪魔の姿をしているが、インキュバスも嫌いだとは、どうあがいてもこのジュネ様に好かれることはないだろう。


インキュバス自体は魔力を自分で作ることができず、魔力を使うには他人から生気をもらい、それを魔力に返還する。けして一人の力では魔力は作れない種族なのだ。

しかも魔力補給には、己の身体を使い、他人の体液を接種しなければなからない。
他人の力なくしては、自分の力は生きてはいけない生き物なのだ。
インキュバスは魔力を自分の力では作れないものの、魔力をためておける量は個人個人で違う。
俺はそんなに魔力をためることができないので、インキュバスの中でも最低クラスの魔力保存量であろう。

 おきれいな天使のジュネ様には他人と寝て力を得るという行為が、とてつもなく汚らわしくみえるのだろう。

愛のない行為を平気でできる、魔力と生気を頂くためだけに他人に媚びを売るようなインキュバスは。

よくジュネはインキュバスを汚れた種族といい、周りにどれだけインキュバスがおろかで空しい生き物か語っていた。

良家子息の大事に育てられたジュネ様には、身体を使って生活するものがいるなど、浅ましい生き物に見えるのかもしれない。


「インキュバスといえば、ジュネ様、知ってますか?
あのミケルのやつが今朝、インキュバスを探してるって…」
「え…あのミケル様が…。ショック…。その話ほんと…?」
「ほんともほんと。見つけたらすぐ知らせるようにって、いって回ってるらしいよ」
「ミケル様もインキュバスの毒牙にやられちゃったのかなぁ…」

ジュネではなく、ジェネの親衛隊の話に同じ親衛隊の子が返す。


「たぶんね…。
今朝方、自分の親衛隊の子に聞きまくっていたらしいよ。‘銀髪のインキュバス’をしらないか…って…」
「銀髪のインキュバス…って、この学校にいるらしい、あの…?」
「そう、あの…」

声を潜めながら、親衛隊の子はこくりとうなづいた。

あのインキュバス、ってのは俺のことである。
俺本来の姿はこの学園じゃ、ちょっとした有名である。
そして、おそらく今話題にでている‘ミケル様’ってのが俺が昨日寝た相手だ。

顔がよくて、良家のおぼっちゃんだから、この学園でも人気だったらしく、ジュネの親衛隊はミケル様とやらが俺と寝たことにショックを受けているらしい。
いけすかないやつだったけど、顔はよかったからそれなりに学園でも有名なやつだったよう…。


「あ〜あ、ミケル様でもダメだったのかぁ…」
「ミケル様、かっこいいもんね…。
だからねらわれちゃったのかも。

いくらミケル様がインキュバス嫌いでも、あの噂の銀髪のインキュバスを前にしたら、ぐらっときちゃったのかもね……」
「銀髪のインキュバスかぁ…。インキュバス嫌いだけど、こんなに学園のいい男ばかり虜にするし、ちょっと気になるよねぇ…」
「うん。それも、この学園で寝たと噂されている男はどれも魔力もあるイケメンばかりだしね…」

魔力のあるイケメン、ねぇ…。
実際のところ、プライド高いだけではずれも結構いたんだけどなぁ…
なんて、親衛隊の言葉に内心笑いたくなるのを我慢する。


「はっ…。所詮ミケルもミケルだったってことさ。あいつ、実際隠しているけど魔力だってないし…家柄だって、僕のいえよりよくないし…。口先だけのやつなんだよ…」

よく、ご存じで。
ジェネは苦々しい顔で呟き…


「やっぱり、あの人だけだよ…。
あんな淫乱なインキュバスの毒牙にかからないのは…。我らがジェイド様だけだ」

といった。


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