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村上と別れてからしばらくして。 穂積が俺の家を訪ねに来た。
俺の家と穂積の家は近所だから、会えないこともない。 だけど、こうして事前に報告もなく、ましてや穂積一人で来ることなど初めてだった。
家の前に突っ立っている穂積に、あがれよと促す。 穂積は玄関に入っても、じっと俺を見つめていた。
「穂積・・・?」 「別れたんだ、あいつと」
唐突に、穂積が言った。一瞬、孝介と穂積が別れたのかと思った。 でも、ニュアンスが少し違った。俺に問うようにかけられた言葉だったから。
別れた、と言われて俺に思い当たる点と言えばたった一つ。 村上のことだ。
先輩とはもう随分前に別れたし、穂積には報告したから。
玄関ではなんだし、穂積を家に招く。 穂積は、俺の部屋に入ったとたん、「よかった」とこぼした。
「良かった?」 「俺も、あいつ、嫌いだったから」
淡々とした口調で、穂積は零した。
「ねぇ、朔夜」
穂積の視線が、真っ直ぐに俺を射抜く。 真剣なその瞳に、俺も顔を逸らすことができず、穂積を見つめ返した。
「お前って、馬鹿だ」
皮肉でも言うかのように、穂積の唇が釣り上がる。
「あの女狐に騙されている、って僕言ったよね。何度も言った。馬鹿じゃないのって」 「穂積・・・?」 「なぁ、朔夜。お前が思っているほど、世界は綺麗じゃないんだよ」
穂積は、泣き笑いの表情をしながら、俺を見る。 普段クールで無表情な穂積。今も、感情は表立っていないが、その顔には少し悲しみが見て取れた。
「お前が想っている世界より、ずっとずっと汚いんだ」
その口調は、どこかやさぐれた、でもさみしげな口調だった。
「朔夜、きっとお前には僕の苦しみがわからないだろうね…、」 「穂積・・・?」 「お気楽なお前にはさ!お前は、自分が傷つけられたとばかり思ってる 笑わせんな、」
激情のまま、穂積が怒鳴る。 そして、ポッケに入っていた携帯を徐に取り出した。
「言ってやるよ、先輩を傷つけたのは、お前だよ。 先輩がこんなことするようになった原因はお前なんだ」 「こんな・・・こと?」 「わかんない?じゃあ、わかんないままでいいんじゃない? だけど・・・これも、ひとつの事実だから」
俺に押し付けるように携帯を差し出した。 画面に映っているのは、穂積と・・・、
「・・・先輩・・・」
穂積と、先輩だった。
それも、お互い裸のまま抱き合っている写真だ。 穂積のペニスが、先輩の身体に挿入されている。
「なん・・・」 「なんでって?さぁね?どう考えたっていいんじゃないの?先輩が売りやってたとか、勝手に考えたらいいよ。妄想したらいい。僕はお前に答えなんかやらない。でもね、こうなった原因は、お前だよ。そして、」
穂積は一度言葉を切ると、一つ息をついて
「黒幕は、お前の知り合いだよ」
眉を寄せながら言った。
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