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「別れるって言うなら、僕と付き合っていたこと、みんなに言うよ」 「言えばいい。っていうか、みんな知っているだろ」
あれだけひと目も憚らずずっといたんだ。 俺たちの付き合っている噂など、みんな知っているだろう。 先輩も、きっと、俺が言わなくても噂で知っていたと思う。
「違う。社会に出たら…、そしたら、男と付き合っていたなんてこと、醜聞になっちゃうよ?いいの?」
泣きそうな顔だったのが一変、ニヤリと笑った。 自分が優位に立っているような、笑み。
「ねぇ、黙っててあげるよ」
しなだれかかり、流し目を送る村上に吐き気がした。
「別にいい」 「え・・・」 「もう、どうだっていいんだよ。誰に何言われたって、もう」
未来には、先輩がいないから。 あんなに好きだった先輩は、もう、側にはいないから。 先輩がいないなら、誰に何を言われたって、よかった。
「だ…、だって、君の家すっごい大きい会社の社長さんでしょ。そんな家の子供が、男と付き合っていたなんていったら・・・」 「俺は俺がしたいことをしているんだ。誰かに咎めらても、別にいい。それに、会社だって、跡を継ぐかわからないし、俺はやりたいようにやるから、だからお前とはお別れだ」 「だけど…、」 「俺を脅してまで付き合おうとするお前と、俺は一緒にいたくないし、いられない」
まだ縋ろうとする村上を置いて、俺は立ち去った。 俺を脅し、付き合いたいと言っていた村上は、酷く醜く見えた。
一番、悪いのはそんな風に村上を追い詰めていた俺だっていうのに。
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