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それからは…、なんだかやるせない毎日を送っていた。 なんでも適当にやって、なんでも適当に過ごす。 無気力感が俺を襲った。 まだ若いのに、何をやっても楽しくなかった。
先輩を失って、全てが色あせてしまった。 俺から、サヨナラを告げたのに。
誰かに抱かれた先輩を許せば良かったんだろうか。 俺以外にあいを囁かれている先輩を、許せば今俺はこんな焦燥感に苛まれていないんだろうか。
何度も先輩に、ごめんなさいと言いたくなった。 ごめんなさい、俺の元に戻ってきてくださいって。
だけど、また戻ってきたとして、また先輩が暗い顔をしていたら。 俺をうっとおしく思っていたら。
そう思ったら、何も言えなかった。 怖くて、先輩を好きでいることにも臆病になって。 何もいうことができなかった。
先輩と別れたことを、穂積と孝介にも告げた。 孝介は、「先輩は朔夜には合わなかったんだよ」と慰めてくれたが。 穂積は苦々しい顔をしていた。
付き合うときは穂積の方が先輩とのことを反対していたのに。 穂積は何か言いたげに俺を見つめるだけだった。
ただ、さり際に一言、「女狐に騙されて馬鹿なお前」とつぶやいていたが。
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