ただ、貴方の幻想を追う。 | ナノ

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「…あ…」
「…先輩」
「…ぅ、」

黙ってしまった先輩を見つめる。
なにも言ってくれない先輩。

どうして、なにも言ってくれないんですか。
俺は貴方の彼氏じゃないんですか。
頼りないですか。

「くそっ」

苦々しく吐いて、壁を殴る。

そうして先輩に背を向けて、部屋から立ち去った。
先輩のことを見ないようにして。


付き合って何ヶ月も経ったが、俺はまだ先輩を抱いたことがなかった。
先輩は恥ずかしいと言って、抱かれるのを躊躇したから。

だから、俺も急ぎはしなかった。
ずっと一緒にいられるのだから、焦る必要はないと思っていたから。
先輩とはゆっくりそういうことを進めればいいと思っていたから。

なのに。

「俺以外の人に抱かれて、喜んでいたの・・・」

どうして、他の誰かに抱かれたの?何か理由があったの?

どうして俺に何も言ってくれないんだ。
どうして・・・。


こんなにも好きなのに、先輩には届かない?

もしかしたら、先輩はそんなに俺のことが好きじゃなかった?
浮かされるように付き合っただけだった?

俺だけが先輩が好きで、空回りしていた?
だから、何も言ってくれなかったの。




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