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「先輩、」 「なぁに…?」 「好きです、」
それから、俺は、暇さえあれば先輩に好きだと告げた。
「先輩が好きです、」
男同志なのに。 男同士という禁忌を考えられなくなるくらい、先輩が好きだった。
俺のこの思いが通じるならと、何度も何度も先輩に好きだと言った。 俺は先輩に夢中で、骨抜き状態だった。
「先輩、」 「朔夜君、」 「俺、先輩が好きすぎて、どうにかなりそう…」 「馬鹿…」
幸せにひたって俺が微笑むと、先輩も俺に控えめに笑顔を返してくれた。
俺は、自分の幸福感に浮かれ、周りのことを全然見ていなかったのかもしれない。
先輩に対する風当たりも、孝介のことも、先輩が何を思っているのかも。
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最初は控えめだが俺に笑顔を見せていた先輩も、次第に笑顔じゃなく悲しい顔をするようになった。 何故だろう。 必死に笑顔を作ろうとする先輩を見るたびに、ぎゅっと心が痛む。
なにかあるの?なら、どうして俺に相談してくれない? 俺は先輩の恋人じゃないの?
先輩の辛そうな顔を見て、次第に俺も顔が強ばるようになる。 どうしてだろう、こんなに好きなのに。 愛しているのに。 うまくいかないのかな。
「最近…元気ないですね…」 「そう…?」 「なにか、あるんじゃ」 「なにも、ないよ…」
傷心していく先輩に、俺は心配し、大丈夫か、と声をかける。でも答えはいつも大丈夫、といったつよがり。俺に何も相談してくれないし、心配かけまいとする。
「具合、悪いなら…、」 「大丈夫、だよ」
先輩は無理に笑った。 大丈夫じゃないくせに。 どうして、俺にまでそんなに無理するの?
俺が年下だから?だから、相談できないのか? 俺は、先輩のとって頼りない存在なんですか?
俺、先輩のためならなんだってやろうって思っているのに。 なんだってやる気でいるのに。
先輩の不安を取り除けないくらい、頼りない男ですか。 どうして、頼ってくれないんですか。 不安があるなら、俺に言ってくれないんですか。
日に日に不安が募っていく。 同時にイライラも蓄積されていく。
先輩の前だというのに、笑顔でいられないことも多くなった。 あんなに好きだった先輩なのに。
今は、先輩のことでこんなにももどかしい。
先輩を笑顔にしたのに、その先輩のことで俺がイライラしてまた先輩が悩んで・・堂々巡りだった。
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